新規事業の立ち上げは、多くの企業にとって成長と競争力強化の大切な手段です。しかし、成功するには適切なプロセスを踏み、計画的に進めることが不可欠です。新規事業には、アイデアの創出、事業計画の策定、立ち上げ、拡大、成長などの複数のフェーズがあり、それぞれの段階で異なる戦略や意思決定が求められます。
本記事では、新規事業のフェーズごとの特徴やポイント、成功に必要なスキルを解説します。事業の成長を加速させ、持続的に発展させるためのヒントを得たい方は、ぜひ参考にしてください。

新規事業でのフェーズとは何か

新規事業の立ち上げには、計画的な進行が求められます。そのため、事業の進行過程をいくつかの「フェーズ（段階）」に分け、それぞれの段階で適切なアクションを取ることが不可欠です。フェーズを区分することで、事業の進捗状況を明確にし、優先すべきタスクやリソース配分を適切に判断できます。
一般的に、新規事業はアイデア創出、事業計画の策定、立ち上げ、拡大、成長などの段階を経て進行します。各フェーズには異なる課題が存在し、それに応じた対応が求められます。このようにフェーズを定めることで、事業の方向性を見失うことなく、リスクを抑えつつ成長させることが可能になります。
事業フェーズについて詳しく知りたい方はこちらから
事業フェーズの4つのポイント！新規事業開発を成功させる秘訣

新規事業をフェーズごとに分けるメリット

新規事業を成功させるためには、明確なプロセスを設定し、適切なタイミングで適切な意思決定を行うことが不可欠です。そのため、事業の進行をフェーズごとに区切ることで、計画性を持って進められるようになります。このアプローチには、複数の利点があります。

取るべき行動や注意点が明確になる

新規事業のフェーズを明確にすることで、各段階で優先すべき行動が明らかになります。例えば、初期のアイデア創出フェーズでは市場調査や競合分析が大切ですが、事業の立ち上げフェーズではマーケティング施策や資金調達が優先事項となります。
このように、フェーズごとに具体的な目標を設定することで、経営陣やチームメンバーが何をすべきかを明確に把握でき、事業の方向性がブレることを防げます。また、事前に各フェーズでのリスクを把握することで、発生し得る問題に対して適切な準備を行うことが可能になるでしょう。これにより、無駄なコストや時間を削減しながら、効率的に事業を推進できるようになります。

タスクの重要度を判断しやすくなる

フェーズを設けることで、現在の事業の進捗に応じたタスクの優先順位を明確にできます。新規事業の立ち上げでは、多くの課題が同時に発生するため、どのタスクに集中すべきかの判断が難しくなりがちです。
しかし、フェーズごとに重要なタスクが整理されていれば、その時点で最も影響の大きい業務にリソースを集中させることが可能になります。例えば、事業計画フェーズでは仮説検証やプロトタイピングが必要ですが、拡大フェーズでは新たな市場開拓や組織拡充が最優先課題になります。
このように、事業の成長ステージに応じて適切な判断を下しやすくなるため、効率的な経営が可能になるでしょう。

手順が体系化され、効率的に進められる

フェーズごとに業務プロセスを整理することで、事業の進め方が標準化され、再現性のある手順が確立されます。これにより、属人的な判断に頼ることなく、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになります。また、新規メンバーが加わった際も、フェーズごとの業務フローが明確になっていればスムーズなオンボーディングが可能です。
さらに、事業の進捗を客観的に評価しやすくなるため、必要に応じて計画の見直しや戦略の軌道修正を迅速に行うことができます。このように、フェーズごとに体系的な進行管理を行うことで、組織全体の生産性向上にもつながります。

新規事業における5つのフェーズ

新規事業は、一気に成功するものではなく、いくつかの段階を踏んで成長していきます。各フェーズには異なる課題や目標があり、それぞれの段階で適切な対応をすることが事業成功の秘訣となります。一般的に、新規事業は以下の5つのフェーズで進行します。

1.アイデア創出・事業テーマ設定

新規事業のスタートは、適切な事業アイデアの創出から始まります。このフェーズでは、市場のニーズやトレンドを調査し、自社の強みを活かせる領域を見極めることが欠かせません。ブレインストーミングや競合分析を行い、どの分野に参入すべきかを明確にします。
また、事業のミッションやビジョンを策定することで、今後の意思決定の指針を確立できます。ただし、アイデアの魅力だけに注目するのではなく、その実現可能性を慎重に評価する必要があります。市場規模の分析やターゲット層の明確化を行い、ビジネスとしての成長余地があるかを検討することが不可欠です。
さらに、参入障壁や法規制のチェックも行い、事業の持続可能性を確認することが成功への第一歩となります。

2.事業計画の作成と実証

事業アイデアが固まったら、次に行うべきは計画の策定と実証です。このフェーズでは、ビジネスモデルの構築、市場分析、収益計画の立案が求められます。ターゲット市場を明確にし、どのように収益を生み出すのかを具体的に設計することが不可欠です。また、競合との差別化戦略を練ることで、事業の独自性を確立できます。
さらに、事業の実現可能性を検証するために、MVP（Minimum Viable Product）を開発し、テストマーケティングを実施することが効果的です。仮説に基づいたプロダクトを市場に投入し、顧客からのフィードバックを収集することで、ビジネスモデルの調整や改善が可能になります。
この段階では、計画倒れにならないように、データに基づいた意思決定を心がけることが大切です。

3.事業の立ち上げ（ローンチ）

事業計画が整い、実証が完了したら、いよいよ市場に向けてローンチします。このフェーズでは、製品やサービスを正式にリリースし、初期顧客を獲得することが最優先事項となります。そのためには、ターゲット層に適したマーケティング戦略を立て、認知拡大のための広告やプロモーションを積極的に展開することが不可欠です。
また、販売チャネルの選定やパートナー企業との連携も成功の秘訣です。事業のローンチ直後は、予期せぬ課題が発生することが多いため、顧客からのフィードバックを素早く収集し、改善を繰り返すことが求められます。
特に、UI/UXの最適化やサービス内容の調整を迅速に行うことで、ユーザー満足度を高め、リピート率が向上します。最初の数カ月で得られるデータや顧客の反応が、今後の成長に大きな影響を与えるため、柔軟な対応が求められるフェーズです。

4.事業拡大

事業が順調に立ち上がった後は、さらなる成長を目指して拡大フェーズに移行します。この段階では、売上の増加と市場シェアの拡大を実現するために、事業のスケールアップが求められます。具体的には、新たな市場への参入、販売チャネルの拡大、製品ラインナップの強化などの戦略を検討することになります。
また、マーケティング施策の最適化を行い、広告の効果測定やターゲット層の見直しを通じて、より効果的な集客手法を確立することが大切です。
さらに、事業が成長するにつれて、組織体制の強化も必要不可欠になります。人員の増強や社内プロセスの整備を進めることで、拡大に伴う業務負荷を適切に管理し、スムーズな事業運営を実現できます。また、資金調達を検討することで、さらなる成長投資を行うことも可能です。
このフェーズでは、成長スピードを維持しつつ、持続的な事業基盤を構築することが成功のポイントとなります。

5.事業の成長・大規模化

事業が一定の市場シェアを獲得し、安定した収益を確保できるようになったら、次の目標はさらなる成長と大規模化です。このフェーズでは、既存市場でのシェア拡大に加え、新規事業の開発や海外展開など、より大きな市場機会を追求することが求められます。
また、企業ブランドの確立や顧客ロイヤルティの向上を目指し、ブランド戦略の強化を図ることも不可欠です。
さらに、事業が大規模化すると、組織の運営方法も変化していきます。従来のスタートアップ的な意思決定のスピード感を維持しつつ、社内の管理体制を整えることが求められます。例えば、経営の透明性を高めるためのガバナンス強化や、社内のワークフローを最適化するためのシステム導入などが挙げられます。
また、競争が激化する中で、継続的なイノベーションを生み出す企業文化を醸成することも、このフェーズで欠かせないポイントとなります。

新規事業の成功に必要なスキル

新規事業を成功させるには、単に良いアイデアを持っているだけでは不十分です。市場の変化に対応しながら、継続的に成長するためのスキルが求められます。特に大切となるのは、リサーチ力、サービス開発能力、マーケティング力、言語化能力の4つです。

リサーチ力

新規事業の成功は、正確な市場分析と顧客ニーズの把握にかかっています。そのため、リサーチ力は極めて大切なスキルです。市場の動向や競合の戦略を把握し、自社がどのように差別化できるかを見極めることが求められます。
特に、顧客のインサイトを深掘りするリサーチが不可欠です。アンケート調査やインタビューを通じてターゲット層の課題を理解し、それに対する最適なソリューションを導き出します。
また、データ分析のスキルも不可欠で、ユーザー行動データやトレンドをもとに、より精度の高い意思決定を行うことができます。適切なリサーチを行うことで、事業の方向性を誤るリスクを減らし、成功確率を高めることが可能になります。

サービス開発能力

新規事業では、顧客の課題を解決する製品やサービスを生み出すことが求められます。そのため、サービス開発能力が不可欠です。ユーザー目線に立ち、シンプルで使いやすいプロダクトを設計することが大切となります。
開発では、MVP（Minimum Viable Product）を活用し、最小限の機能を持つプロトタイプを素早く市場に投入し、ユーザーの反応を確認しながら改良を重ねるアプローチが効果的です。
また、技術トレンドの把握や、デザイン・ユーザー体験（UX）への理解も必要になります。単に機能が豊富なだけでなく、実際に「使いやすい」「価値を感じる」サービスを作ることが、競争の激しい市場で生き残るために必要となります。

マーケティング力

良いサービスを作るだけでは、事業は成功しません。それを適切なターゲットに届け、価値を伝えるためのマーケティング力が不可欠です。特に、新規事業では限られたリソースの中で最大限の成果を出すため、効果的なマーケティング戦略の設計が求められます。
デジタルマーケティングを活用し、SEO、SNS、広告運用など多角的な施策を展開することが効果的です。また、PR戦略やコンテンツマーケティングを駆使して、ブランドの認知度を高めることも不可欠になります。
さらに、顧客データを分析し、ターゲット層ごとに最適なアプローチを行うことで、より高い成果を得ることが可能になります。マーケティング力を磨くことで、事業の成長を加速させることができるでしょう。

言語化能力

アイデアやビジョンを正しく伝え、ステークホルダーを巻き込むためには、高い言語化能力が求められます。
事業を推進するうえでは、社内のメンバーや投資家、顧客など、多くの人々に自社の価値を理解してもらう必要があります。そのため、シンプルかつ説得力のある言葉で伝えるスキルが不可欠です。特に、プレゼンテーションや営業資料の作成において、論理的かつ魅力的な表現を用いることが欠かせません。また、社内コミュニケーションでも、明確なビジョンを共有することで、チームの方向性を統一し、組織のパフォーマンスを最大化することができます。言語化能力を鍛えることで、ビジネスチャンスを広げ、事業の成長を加速させることができます。

新規事業におけるポイント

新規事業を成功させるためには、各フェーズで適切な対応をすることが求められます。
特に、創業期・成長期・安定期・拡大期の各段階で押さえるべきポイントを理解し、それぞれの状況に応じた戦略を立てることが不可欠です。

創業期のポイント

創業期は、新規事業の方向性を決定し、基盤を固める大切なフェーズです。この段階では、市場のニーズを深く理解し、自社の強みを活かせる事業領域を見極めることが求められます。事業のアイデアが明確でない場合は、徹底したリサーチを行い、ターゲットとする顧客層の課題を洗い出すことが不可欠です。
また、創業期は資金が限られているため、コストを抑えつつ、最大限の成果を生み出す戦略が求められます。そのため、MVP（Minimum Viable Product）を活用し、最小限の機能を持つプロトタイプを市場に投入し、実際の顧客の反応を見ながら事業の方向性を修正することが大切です。
さらに、ビジネスモデルを確立し、収益化の道筋を明確にすることで、スムーズに次のフェーズへ移行しやすくなります。

成長期のポイント

事業が順調に軌道に乗り始めると、成長を加速させるフェーズに入ります。この段階では、より多くの顧客を獲得し、ブランドの認知度を高めることが大切な課題となります。そのため、マーケティング戦略を強化し、SEO対策やSNSの活用、広告運用など、多角的な手法を取り入れることが求められます。
また、組織の成長も欠かせないポイントです。事業が拡大するにつれて、業務の効率化が求められるため、適切な人材の採用やチームの構築が必要になります。特に、事業の成長スピードに合わせて組織を拡充し、適材適所で人員配置を行うことで、より強固な経営基盤を築くことができます。
さらに、顧客データを分析し、ターゲット層に合わせたプロモーション施策を実施することで、持続的な成長を実現できます。

安定期のポイント

事業が一定の市場シェアを獲得し、収益が安定してくると、次に求められるのは持続的な成長と競争力の維持です。安定期では、既存顧客の維持とLTV（ライフタイムバリュー）の最大化が大切なテーマとなります。そのため、顧客満足度を高めるためのカスタマーサポートの強化や、サービスの改善を継続的に行うことが求められます。
また、市場環境の変化に対応するために、競合分析を定期的に行い、自社の強みを活かせる新たな施策を検討することも必要です。特に、テクノロジーの進化や消費者の嗜好の変化に対応するため、データ分析を活用しながら事業の方向性を柔軟に調整していくことが成功のポイントとなります。

拡大期のポイント

事業が安定し、さらなる成長を目指す拡大期に入ると、新たな市場への進出や事業の多角化が求められます。このフェーズでは、国内市場の拡大に加え、海外市場への展開を検討する企業も多くなります。
そのため、ことが不可欠です。
各市場の特性を理解し、それに合わせた戦略を立案するまた、事業規模の拡大に伴い、組織のマネジメントもより高度なものになります。社内の管理体制を強化し、経営の透明性を高めることで、長期的な成長を支える基盤を築くことができます。さらに、資金調達やM&A（企業買収・合併）などの手段を活用し、事業の成長スピードを加速させることも一つの選択肢となります。
このフェーズでは、短期的な利益だけでなく、長期的なビジョンを持ち、企業としての持続的な成長を目指すことが不可欠です。
事業計画の立て方を詳しく知りたい方はこちら
事業計画の立て方とは？具体的な手順や考え方をわかりやすく解説！ | 株式会社koujitsu

まとめ

新規事業の成功には、フェーズごとの適切な対応が不可欠です。アイデア創出から事業の成長・大規模化までの各段階で、リサーチや計画立案、マーケティング、組織強化などの大切な要素を押さえることが求められます。また、成長に応じた戦略の見直しや柔軟な対応が、競争の激しい市場での生き残りを左右します。
さらに、成功のポイントとなるのは、リサーチ力やマーケティング力、言語化能力などのスキルです。事業のフェーズに応じた適切な判断を行いながら、継続的な改善を重ねることで、新規事業の持続的な成長を実現できるでしょう。
マーケティング支援の専門家であるkoujitsuでは、戦略設計からハンズオンまでを一気通貫でサポートします。企業の特徴に合わせた最適なプランを提案し、成長を加速させるための取り組みを実行しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

早坂遊羽

• 
• 
• 

株式会社koujitsu 取締役 COO

京都大学卒業後、大手SIerにてITコンサルタントとして従事。官公庁や大手民間企業のプロジェクトにおいてメンバーとして関わる中で、よりハンズオンの支援に携わりたいと考えるようになる。その後PRコンサルタント、事業会社広報、人材事業立ち上げを経てkoujitsuへ参画。現職ではマーケティング事業部を統括しながら、プレイヤーとしてクライアントのマーケティング戦略企画・実務運用にも携わっている。