
新規事業開発は成功確率が一割未満ともいわれ、担当者の適性が成果を左右します。既存事業とは異なり、前例がない状況で意思決定、判断を迫られるためです。 本記事では新規事業に向いている人の特徴と苦手な人の傾向を比較し、必要なス […]
新規事業開発は成功確率が一割未満ともいわれ、担当者の適性が成果を左右します。既存事業とは異なり、前例がない状況で意思決定、判断を迫られるためです。
本記事では新規事業に向いている人の特徴と苦手な人の傾向を比較し、必要なスキルやモチベーション向上策、適性の見極め方と育成ポイントまで網羅します。採用・配置・育成に携わる方はぜひ参考にしてください。
新規事業に向いている人の10の共通点
新規事業では、適性を見極め、人材配置や採用、育成を行う必要があります。ここでは、新規事業に向いている人の特徴を紹介します。
1.不確実性を楽しめる柔軟な思考の持ち主
市場規模も顧客ニーズも未知の領域では、計画通りに進むことのほうが珍しいです。変数の多さをストレスではなく刺激と捉え、新しい学びを得られたと考える人は新規事業への適性があるといえます。
意思決定の根拠を一つに固定せず、複数のシナリオを並行して検討することで変化に対応可能です。また、好奇心と学習意欲を持ち続ける姿勢が、チーム全体の心理的安全性を高めます。
不確実性を前提に取り組む姿勢が、新規事業を成功させるために役立ちます。結果として、組織が大胆なピボットを必要とする局面でも、恐れずに挑戦できるでしょう。
2.「まず動く」で検証を重ねる行動力
新規事業は机上の議論だけでは進捗が測れません。まず行動し、検証のサイクルを短く保つことで、より実践的な知識や判断力を身につけられます。
仮設検証を行う最小限のプロダクトであるMVP(Minimum Viable Product)を投入し、ユーザーの反応を数値とコメントで捉えることで改善点を具体化できます。初期投資を抑えながら学習効率を最大化できる行動力が新規事業では欠かせません。
さらに、実験の失敗をネガティブに捉えず次の施策に活かす姿勢が、事業成功までの流れをよりスムーズにします。繰り返し行動を取る姿勢がチームのエネルギーを波及させ、挑戦への心理的ハードルを下げます。結果として、意思決定の質と速度を同時に向上させる好循環が生まれ、競合より一歩早く市場適合を見極める強みに直結します。
3.高速で仮説検証を回すスピード感
新規事業では外部環境が日々変わるため、仮説の陳腐化速度も速く、高速で仮設検証のサイクルを回すスピード感も求められます。情報収集から要因分析、実験設計、データ取得までを短いサイクルで回せる人は市場の変化を予測し、より適切な計画や施策の立案、実行が可能です。
仮説ごとに検証コストと期待効果を数値で比較し、優先順位を即座に付け替えることで資源の無駄を防げます。学習の結果をナレッジベースに反映し、チーム全体が次の反復で活用できる体制を整えることも重要です。
この連鎖により、意思決定のスピードと精度が相乗効果を生み、事業化までのリードタイムを劇的に短縮できます。結果が芳しくない場合でも早期に撤退判断を行い、経営リスクを最小化できます。
4.ロジカルに要因を分解する思考力
ロジカルに要因を分解し、思考する力が新規事業に求められます。フェーズごとにKPIを設定し、要因ごとの寄与度を分解することでボトルネックになっている要素を可視化できます。
ロジックツリーやMECEを駆使して議論を構造化すると、関係者との認識の齟齬を減らせます。
5.予算と効果を常に比較するコスト感覚
新規事業は投資回収の見通しが立ちにくいため、コスト感覚が甘いと撤退基準を見失います。実験の規模ごとに必要資源を数値で示し、期待リターンと比較する姿勢が重要です。
低コストで学習量を最大化する工夫として、外部サービスの活用やリース利用があります。費用対効果の意識が浸透すると、現場からも創意工夫が生まれ、資金繰りの柔軟性が高まります。
6.顧客課題を高解像度で捉える観察眼
顧客課題を高解像度で捉える観察眼が、新規事業の成功に必要です。ユーザー調査で得た一次情報をストーリーマップ化し、感情曲線と合わせて可視化すると顧客理解が深まります。
課題の深刻度と頻度を定量化すれば、市場規模の見積もり精度も上がります。定性と定量の両面でニーズを把握する姿勢が、機能開発の優先順位を導きます。
7.組織の壁を越えて提案できる発信力
新規事業は複数部門の資産を組み合わせて価値を生み出すため、組織の壁を越えた発信力が欠かせません。ミッションと成果指標をわかりやすく共有し、協力のメリットを具体的に提示し、協力関係を築くことが重要です。また、社外パートナーとの協力や連携は、新規事業の実証実験のスピードを速めます。
8.小さな失敗を許容して学ぶマインド
失敗を早期に経験し、学びへ転換できる人は、新規事業における挑戦回数を増やし、経験に基づく判断が可能になります。ネガティブな結果を分析材料として捉え、次の仮説設定に結びつける姿勢が大切です。小さな失敗を許容する文化を組織内で育むと、メンバー全員が失敗をおそれず、積極的に挑戦できる環境を整えられ、新規事業の成功に近づきます。
9.データと直感を統合するバランス感覚
定量データに基づく分析と、その背後にある顧客感情の直感的理解を両立できる人は意思決定が早いです。数字が示す傾向と現場の温度感を突き合わせることで、洞察の解像度が上がります。
データに過度に依存せず、判断を遅らせないバランス感覚が先行者利益を生みます。仮説の当たり外れを素早く学びに転換できるハイブリッド思考が求められます。
10.目標達成までやり抜く粘り強さ
市場検証やピボットが続く中でも、最終目標達成まで粘り強く行動できる人が事業の骨格を支えます。短期的な成果が出ずとも、ビジョンと指標を結びつけてチームを鼓舞できます。
継続的な学習と改善を怠らず、フィードバックを歓迎する態度が成長曲線を維持します。内発的動機と外発的動機を両輪で保つセルフマネジメント力が試されます。
新規事業に向いていない人の6つの傾向
新規事業に向いている人の特徴を紹介しましたが、人材配置では新規事業に向いていない人の傾向の把握も大切です。ここでは、新規事業に向いていない人の傾向を紹介します。
1.完璧主義でスタートを切れない
完璧な条件が揃うまで動けない人は市場変化に柔軟に対応できず、新規事業の開発をスムーズに進められません。MVPを投入し、学習を早める考え方が持てなければ、新規事業は停滞するおそれがあります。優れた経歴がある人材でも、完璧主義で行動が遅い場合は、新規事業に適していないケースがあります。
2.新しさよりリスクを優先してしまう
新しさよりリスクを先に考える人はチャレンジを避けがちです。新規事業では、新たな事業を開発するため、ある程度リスクを許容してPDCAサイクルを回す必要があります。リスク管理はもちろん重要ですが、リスクを避けることで挑戦ができなければ新規事業の開発を成功させることは難しいでしょう。
3.他責思考で主体的に動かない
問題が起きた際に組織や環境のせいにする他責思考の人材は新規事業に向いていません。主体的に行動をしたり、学ぼうとしたりする姿勢がなく、新規事業の成長に繋がらないためです。
仮に新規事業の立ち上げに成功した場合でも、長期的に新規事業に携わる中で向上心がない人がチームに多いと、競合他社との競争に勝てなくなる可能性があります。
4.頭で考えるだけで行動が伴わない
アイデアを頭の中で熟成させること自体は重要ですが、行動が伴わなければ検証が進みません。デスクトップリサーチだけで機会の大小を判断すると、学びの幅が狭まります。
手を動かして一次情報を取りに行く姿勢が事業の温度感を高めます。思考と実践をセットにし、PDCAサイクルを高速で回せる人材が新規事業には必要です。
5.社内政治を優先し提案を控える
社内政治を優先し提案を控えるような人は新規事業に向いていません。新規事業では市場を把握し、顧客目線での取り組みが求められるためです。
新規事業の人材は、上司や役員相手でもはっきりと意思表示できる人材が適しているといえるでしょう。
6.変化より安定を重視し挑戦しない
変化より安定を重視するマインドは既存事業では強みですが、新規事業では機会損失につながります。未知の領域に踏み出すと決めても、安定志向が強いと撤退判断が早まりやすいでしょう。
新規事業においても安定性は無視できませんが、変化をおそれず積極的に挑戦する人材ほど新規事業では活躍が期待できます。
新規事業を任せる際にモチベーションを高める方法
新規事業を任せる際、担当者のモチベーションの向上や維持が大切です。既存事業とは異なり、新規事業では正解がないため、モチベーションの維持が難しいことが理由として挙げられます。ここでは、新規事業の担当者のモチベーションを高める方法を紹介します。
パーパス共有による主体性喚起
組織のパーパスと新規事業の目的を結びつけて共有すると、担当者の主体性が高まります。仕事の意義が個人の価値観と重なるほど、困難な状況でも内発的動機が維持されます。定期的にパーパスを言語化し直し、成果と結びつける仕組みがモチベーションの再点火装置になります。ビジョンと日々の行動が一本線でつながる状態を作ります。
小さな成功体験を積ませる環境整備
小さな成功を積み重ねることで自己効力感が高まり、新たな挑戦への苦手意識を取り払えます。具体的なKPI達成や顧客のポジティブな声を可視化して共有すると、チーム全体にとってより良い環境を整えられるでしょう。
KPIを細かく設定することや顧客からの声を確認できる環境を整えることで、担当者のモチベーション維持につながります。
評価制度とインセンティブの最適化
新規事業は短期的な売上が立ちにくいため、定量成果だけを評価するとモチベーションが低下します。学習指標や仮説検証プロセスを評価軸に組み込み、行動を正しく後押しする制度設計が不可欠です。
インセンティブを最適化すると新規事業担当者が高いモチベーションを持って業務にあたることが予想されます。最適化した評価制度とインセンティブの導入はモチベーションが低下しやすい新規事業を成功に導く要素の1つです。
新規事業に必要な5つのスキル
新規事業を成功させるためには、複数のスキルが必要です。ここでは、新規事業を任せる人材に必要なスキルを紹介します。
人材選定や人材育成の参考にしてください。
1.情報収集とインサイト抽出のスキル
急速に変わる市場で機会をとらえるには、情報収集とインサイト抽出のスキルが必要です。新規事業はさまざまな情報を収集して、それらを分析したうえで複合的に評価し、計画や施策の立案、実行が求められます。
新規事業はリサーチする情報の範囲が広いため、情報収集とインサイトを抽出する専門的なスキルがあると、事業の成功につながりやすいです。
2.論理的思考と課題分解のスキル
複雑な課題を分解し、再構築できる論理的思考は新規事業の意思決定に欠かせません。課題を構造化することで優先順位が明確になり、資源配分の精度が上がります。
仮説検証のプロセスを定量化し、学習を加速させるフレームワークの運用が求められます。論理と直感を往復させる姿勢が洞察を深めます。
3.コミュニケーションと交渉のスキル
外部パートナーやステークホルダーとの交渉では、両者にとってメリットがある関係を構築する力が必要です。立場や利害が異なる相手に共通基盤を提示し、迅速に合意を形成することで効率的に交渉を進められます。
4.プレゼンテーションとストーリーテリングのスキル
不確実なアイデアを魅力的に伝えるプレゼンテーションは資金や仲間を集める上で不可欠です。ストーリーテリングで顧客課題から未来像までを描き、聞き手の共感を引き出します。
データとエピソードを組み合わせて論理と情緒の両面を刺激すると、行動を促す説得力が高まります。スライドだけでなく、プロトタイプやデモを交えた多感覚アプローチが効果的です。
5.プロジェクトマネジメントのスキル
新規事業は要件が変動するため、アジャイル型のプロジェクトマネジメントが求められます。スプリントごとに学習目標を設定し、リソースとリスクをこまめに見直すことでプロジェクト進行のスピードを維持できます。
関係者の期待値を調整しながらバックログを更新する調整力が成果物の品質を上げるうえで必要です。
新規事業への向き不向きを判断する方法
新規事業の人材配置を行う際、向き不向きを判断する方法を紹介します。
実績や成果を確認する
過去のプロジェクトでどのように価値創造を行ったかを実績で確認すると適性が見えます。成功と失敗の要因分析を本人の言葉で説明できるかのチェックが大切です。
数字だけでなく、顧客やチームへの貢献度を把握すると行動特性が立体的に浮かび上がります。
コンピテンシー面接から適性をチェックする
コンピテンシー面接では具体的行動例を深掘りして人材の適性を判断できます。STAR法を用いた状況・課題・行動・結果を整理し、問題解決パターンの把握が効果的です。
仮説設定から検証までの思考プロセスを問うことで、新規事業適性を客観的に評価できます。事実ベースの深掘りにより、過大、あるいは過小な自己評価を防止可能です。
アセスメントツールを活用する
リーダーシップやリスク耐性を測るアセスメントツールを活用すると、主観による判断の偏りを減らせます。定量スコアと面接結果を組み合わせて総合判断すると、客観的な視点で人材の向き不向きを判断可能です。
オンラインで完結する診断は候補者と組織の負担を下げ、選考スピードを高めます。適性データを蓄積しておくと、将来の配置転換の際にデータを効果的に活用できるでしょう。
新規事業に適した人材を育成するコツ
新規事業に適した人材が社内に揃っているとは限りません。場合によっては、人材を新規事業に適した人材として育成する必要があります。
ここでは、新規事業に適した人材を育成するコツを紹介します。
OJTとメンター制度の採用
経験学習を加速させるOJTとメンター制度は新規事業人材の自走を促します。実務の場でリアルタイムにフィードバックを受けることで、学習サイクルが短縮されます。
メンターが心理的安全性を提供し、挑戦を後押しすると失敗への恐怖が薄れます。学習目標をペアで設定し進捗を確認する仕組みが定着を助けます。
リーンスタートアップ研修の導入
リーンスタートアップ研修では、仮説検証とMVP開発を短期間で体感できます。演習で即時に顧客ヒアリングを行うことで、学習の深さが違います。
実務と密接に結びついた研修は職場移転直後から効果を発揮します。研修で得たフレームワークを日常業務に落とし込むフォローアップが重要です。
失敗を共有する文化を構築する
失敗を共有する文化を構築すると、組織全体の学習効率が向上します。エラーログをオープンにすることで再発防止策より新しいアイデアが生まれます。
失敗を積極的に称える儀式を設けると、挑戦を後押しする心理的報酬になります。ナレッジの共有が早まり、暗黙知が形式知へ転換されます。
まとめ
新規事業は短期で成果が見えにくく、投入した資源のリターンの不確実性が高いです。そのため、新規事業では人材の適性を見極めることが重要です。
採用・配置の段階で向き不向きを見極め、スピード感を持って新規事業の立ち上げに臨むことが求められます。また、評価制度と育成施策を連動させ、行動と学習を担当者が積極的に行える環境の構築も必要です。
新規事業に向いている人の特徴を押さえて、人材の採用や配置、育成に臨みましょう。

koujitsu編集部
マーケティングを通して、わたしたちと関わったすべての方たちに「今日も好い日だった」と言われることを目指し日々仕事に取り組んでいます。