新たに事業を立ち上げる際に重要になるのが、ターゲットが本当に求めているものを把握するニーズ調査です。事前に顧客の潜在的な悩みや要望を洗い出しておくことで、価値あるサービスや商品を生み出せる可能性が高まります。本記事では、新規事業のニーズ調査について、調査の重要性や具体的な手法、成功率を上げるためのポイントを詳しく解説します。事前準備を怠らず、効果的なリサーチを行うことで新規事業の成功率を高めていきましょう。

新規事業のニーズ調査が重要な理由

新規事業の立ち上げは資金や人材など多くのリソースを投入するため、誤った方向に進むと大きな損失を招くおそれがあります。そこで、ニーズ調査によって顧客の求める価値や潜在的な課題を事前につかんでおくと、開発やマーケティング戦略を的確に組み立てやすくなります。

また、早期に市場の反応を確かめることで、リスクを抑えた小さな実験（PoCなど）を行い、方向性がズレていれば迅速に修正できる利点があります。さらに、調査の結果をチームやステークホルダーと共有することで、一致したビジョンのもとでプロジェクトを推進しやすくなるのもポイントです。

新規事業のニーズ調査実施で得られる効果

ニーズ調査を行うと、市場に存在する隠れたニーズや顧客の不満点を具体的に把握できるメリットがあります。これらを踏まえた施策は、従来にはなかった新たな価値提案につながり、競合との差別化を容易にします。

さらに、潜在顧客がどのような要因で購買を決定するのかを知ることで、プロダクトやサービスの機能開発の優先順位を正しく設定できます。結果的に、リソースを無駄なく活用し、短期間で成果を出す可能性が高まるでしょう。

また、チーム内で調査結果を共有すると、共通言語が生まれて意思決定がスムーズになります。エビデンスに基づく議論が増え、感覚的な判断ミスを減らすことができるのも利点です。

新規事業で活用したいニーズ調査の7つの手法

新規事業のニーズを見極めるには、多角的に情報を集めることが重要です。ここでは、定量調査からSNS調査、社内調査まで、用途や目的に応じて活用できる7つの手法を紹介します。

それぞれに特徴があるため、組み合わせながら最適な方法を選びましょう。

1.定量調査

定量調査は、統計的に扱える数値データを収集して分析する手法です。代表的な例としては、オンラインアンケートや街頭調査などがあります。回答数を多く確保すれば、顧客のニーズや意見を客観的に把握することが可能です。

ターゲット層を絞り込んだうえで、質問項目を厳選しておくと得られるデータの精度が向上します。クロス集計や相関分析などを駆使し、主要因と結果の関係を検証することで、新たなビジネスチャンスや優先的に解決すべき課題を明確にできる点が魅力です。

2.モニター調査

モニター調査は、実際に商品やサービスを一定期間試してもらい、使用感や改善点を詳細にフィードバックしてもらう方法です。顧客が感じるメリットだけでなく、使いづらい部分や意外な要望を発見する機会が得られます。

開発初期の段階からモニター調査を行うと、大きな手戻りを回避できるメリットがあります。ユーザビリティやデザインなど、定量調査だけでは拾いきれないリアルな使用感を把握しやすいのが特徴です。モニターの選定やインセンティブ設計を慎重に行い、信頼できるデータを収集することが大切です。

3.SNS調査

SNS調査は、TwitterやInstagramなどのSNS上の投稿や反応を分析し、市場のトレンドや顧客の本音をつかむ手法です。従来のアンケートなどとは異なり、ユーザーが自発的に発信した情報や感想をリアルタイムで収集できる点が魅力です。

ハッシュタグを活用して関連する投稿を検索したり、ソーシャルリスニングツールでブランド名やキーワードをモニタリングすると、競合製品との比較や潜在的な問題点が浮かび上がる場合があります。ただし、ネガティブ・ポジティブ両方の意見が混在しており、ステマなども存在しうるため、複数の指標や他の手法と合わせて検証することが求められます。

4.競合調査

競合調査は、同じターゲット層や市場に対して商品・サービスを提供している他社の動向を調べる手法です。価格設定や機能面、顧客評判などをチェックすることで、自社の強みや差別化ポイントを明確化できます。

たとえば、競合が苦戦している領域や、顧客から高く評価されている点を分析すると、新規事業の戦略策定に役立ちます。ウェブサイトやSNS、プレスリリース、顧客レビューなどから情報を収集し、どのようなバリュープロポジションを打ち出しているのかを把握することが重要です。

5.AI調査

AIを活用した調査では、大量のテキストデータや画像、音声データなどを機械学習アルゴリズムで解析し、トレンドや消費者の感情、需要予測などを自動的に抽出できます。SNSやレビューサイト、カスタマーサポートのチャットログなど、膨大なデータを短時間で解析できるのが大きなメリットです。

自然言語処理を用いて感情分析を行い、顧客のポジティブ・ネガティブな反応を数値化できます。ただし、AIのモデル精度は学習データに依存するため、バイアスの存在や誤判定のリスクがある点には注意が必要です。

6.商品やサービスの体験

商品やサービスを実際に顧客として使ってみる手法は、担当者自身が現場目線を得るうえで効果的です。自社だけでなく、競合や他業種の似たサービスを体験することで、ユーザーが感じる使いやすさや不満点をリアルに把握できます。

とくに、UIや操作フローなど細かな部分でユーザーがつまずきやすい箇所の把握が可能です。また、スタッフ全員が同じ体験をすることで、共通イメージが生まれやすくなり、改善点やアイデアを議論しやすくなります。

7.社内調査

社内調査は、営業やカスタマーサポートなど、顧客に直接関わる担当者から意見を集める方法です。顧客の声を最も近い距離で聞いているスタッフが抱く感覚や課題は、意外な洞察をもたらす場合があります。

現場の社員が日々受け取っている問い合わせ内容やクレーム理由などを定期的に会議で共有すれば、改善の方向性を迅速に模索できる利点があります。アンケートやインタビュー形式で情報を引き出すと、定量・定性の両面から有益なデータの蓄積が可能です。

新規事業のニーズ調査を行う際の5つのポイント

新規事業のニーズ調査を成功させるためには、調査前の準備やプロセスで気を付けるべきポイントがあります。ターゲット層の定義から複数の手法の活用まで、適切な順序で取り組むと精度が高まります。

ここでは5つのポイントを挙げ、どのように注意して進めるべきかを説明します。

1.調査対象のターゲット層を明確にする

調査の前に、どの市場やどんな顧客層を対象とするのかをはっきり決めておくことが重要です。漠然と「20代女性」などの大枠だけでは、収集するデータが広範囲になりすぎて焦点を絞れません。

ペルソナを設定したり、具体的な購買行動や価値観を想定するなど、セグメントを細分化することで、調査対象とする顧客のニーズが立体的に見えてきます。ターゲット層を詳細に決めることで、後続の調査でどの質問項目を設けるか、どのチャネルを利用するかなどがスムーズになります。

2.事業の軸と優先順位をあらかじめ決定する

新規事業のビジョンや目的が定まっていない段階で調査を行うと、何を基準に判断すればいいか分からなくなります。たとえば「売上重視か、顧客満足度優先か」「技術を活かしたイノベーションを目指すのか」など、事業の軸が曖昧だと調査結果の解釈に困るでしょう。

そのため、事前に経営層やチームで方向性を合意し、調査によって明らかにしたい項目や優先順位をリストアップする必要があります。これによって、調査の設計や結果の活用がぶれずに行えるようになります。

3.目的に合った調査方法を選ぶ

調査の目的によって、最適な手法は異なります。定量調査は市場規模や顧客属性の把握に向いていますが、顧客の本音や細かな使い勝手を知りたい場合にはモニター調査やインタビューなどが適しています。

SNS調査やAI分析などは高速に大量データを扱える反面、ノイズも多い点に注意が必要です。各調査方法には使用に適したシーンとそうでないシーンがあるため、調査方法ごとの特徴を把握して、適切な方法を選定することがポイントです。

まずは「どのような情報を得たいのか」を明確にし、それを満たすための方法を選ぶと調査の効率が上がります。複数の手法を組み合わせ、補完し合う形で進めるのも効果的です。

4.複数の調査を実施する

ひとつの手法だけに頼ると、情報が偏ったり抜け落ちたりするリスクがあります。たとえば定量調査だけでは深層心理を捉えづらく、インタビューだけでは母数が少なくなりがちです。

オンラインやオフライン、定量と定性など複数のアプローチを組み合わせることで、得られるデータの信頼性が高まります。クロスチェックによって同じニーズが繰り返し確認されれば、そのニーズが実際に強固である可能性を確信しやすくなります。

5.ターゲット層と調査対象がズレないよう注意する

調査設計の段階でターゲットを明確にしていても、実際に集まる回答者が想定外の属性に偏るケースがあります。特典を用意したアンケートで学生が多く回答したり、SNSでの募集が特定のコミュニティに偏ってしまうなどが代表例です。

こうした場合は、年齢・性別・職業などのフィルタリングを行ったうえで結果を分析し、ターゲット層以外のデータを区別する工夫が大切です。集まった回答者とターゲットの差分をチェックすることで、正確な考察ができるようになります。

新規事業のニーズ調査を行う手順

新規事業のニーズ調査を円滑に進めるためには、明確な手順を踏むことが大事です。ここでは「目的を確認する」「調査を実行する」「調査結果を分析する」という3ステップを軸に、具体的な進め方を紹介します。

各ステップで注意すべきポイントを押さえれば、精度の高い意思決定を行いやすくなります。

1.目的を確認する

調査を始める前に「何のためにニーズ調査をするのか」を明確にしておくと効果的です。新規事業のターゲット顧客像を知りたいのか、市場規模を見極めたいのか、あるいは既存の製品アイデアをブラッシュアップするためなのか、といった目的を設定します。

目的が曖昧だと、質問の方向性や調査方法の選択に迷いが生じます。逆に目的が明確ならば、「どのデータをどれくらい集めるべきか」「どのように分析するか」が見えてくるため、チーム内の協力体制も築きやすくなるでしょう。事前にステークホルダーや経営層と擦り合わせ、目的の明確化や意識の統一も重要です。

2.調査を実行する

ニーズ調査の目的と手法が決まったら、実際に調査を行います。もし定量調査を行うならオンラインアンケートや街頭調査の設計、モニター調査なら募集要件や期間の設定が必要です。SNS調査ならハッシュタグの選定やツールの導入を検討する段階となります。

実行中は、対象が正しくターゲット層を含んでいるか随時確認しながら進めましょう。答えてほしい質問が分かりにくい場合や、会場のアクセスが悪い場合など、細部の配慮が結果の品質に影響を与えます。調整役を決め、進捗を把握しながら進めてください。

3.調査結果を分析する

調査を終えたら、集まったデータやインタビュー記録を分析し、新規事業に活かすインサイトを抽出します。定量データならクロス集計や回帰分析などを行い、セグメントごとの特徴を可視化すると的確な施策を立案しやすいです。

定性情報については、キーワードや感情面を整理して共通点や意外な発見を探ります。分析の結果はグラフやスライドなど分かりやすい形でまとめ、ステークホルダーやチームメンバーと共有しましょう。その後、得られた洞察を基にプロトタイプの改良やマーケティングプランの策定に移ります。

新規事業のニーズ調査は専門家の支援を受けることがおすすめ

新規事業におけるニーズ調査は、手法の選定から実行、分析まで多岐にわたります。人材不足やノウハウ不足などでスムーズに進められない場合は、専門のリサーチ会社やコンサルタントの支援を受けることがおすすめです。

専門家は豊富な事例をもとに、ターゲット層へのアプローチや調査設計を迅速かつ的確に行ってくれます。自社だけでは思いつかなかった視点や最新の調査ツールを活用することで、時間とコストの節約にもつながります。費用対効果を考慮しながら、最適なパートナー選びを検討してみてください。

まとめ

新規事業のニーズ調査を適切に行うことで、市場や顧客の潜在的な要求を明らかにし、失敗のリスクを大幅に削減できます。定量と定性、オンラインとオフラインなど多角的な手法を組み合わせ、調査結果を的確に分析する手順が重要です。

ターゲット層の明確化や目的の再確認を怠らず、複数の方法で情報を得ることで精度の高い判断ができます。さらに、調査内容を組織全体で共有し、専門家の力を借りるなど柔軟なアプローチをとると成功率が高まります。

新規事業を確実に成長させるために、ニーズ調査を計画的かつ継続的に実践していきましょう。

koujitsu編集部

マーケティングを通して、わたしたちと関わったすべての方たちに「今日も好い日だった」と言われることを目指し日々仕事に取り組んでいます。