
新規事業の社内での立ち上げは、企業の成長とイノベーションにおいて欠かせない取り組みです。既存事業だけに注力していては、市場の変化や競合の参入に対して柔軟に対応するのが難しくなります。そこで、社内に新規事業を根付かせること […]
新規事業の社内での立ち上げは、企業の成長とイノベーションにおいて欠かせない取り組みです。既存事業だけに注力していては、市場の変化や競合の参入に対して柔軟に対応するのが難しくなります。そこで、社内に新規事業を根付かせることで新たな売上源を生み出し、企業の将来性を高める狙いがあります。
本記事では、社内での新規事業立ち上げについて、計画を失敗なく進めるためのプロセスとポイント、さらには課題への対処法や成功事例も交えて解説します。イノベーションを起こすための基盤づくりにぜひお役立てください。
社内新規事業を形にする6つのプロセス
社内で新規事業を立ち上げる際には、アイデアの創出からチーム体制の確立、さらにローンチ後の運用まで体系立てたプロセスが欠かせません。ここでは、ビジョンの明確化や市場性の検証といった6つのステップを中心に紹介します。
各段階を丁寧に進めることで、成功率を高めながら事業の質を底上げできます。
1.ビジョンや目的を明確にする
新規事業を社内で始める最初のステップとして、事業のビジョンや目的をはっきりさせることが重要です。なぜこの事業を立ち上げたいのか、企業の全体戦略とどうつながっているのかを経営陣と共有することで、関係者が同じ方向を向きやすくなります。
たとえば、既存の顧客層とは異なる市場への参入や、革新的な技術を活かしたサービス創出など、企業として追求したい価値を具体的に言葉にしてみましょう。ビジョンがあれば、初期の企画やアイデア検討の際に指針がぶれにくくなり、プロジェクトメンバーのモチベーションを高める効果もあります。
2.アイデア創出とネタ出し
新規事業を立ち上げるには、まず具体的なアイデアが必要です。ブレインストーミングやワークショップ、他業種事例のリサーチなどを通じて、まだ形になっていないネタを掘り起こします。既存顧客や部署を巻き込んで意見交換を行うと、多彩な視点が集まりやすいです。
ここでは数を重視してアイデアを出す段階と、絞り込みを行う段階を分けることが大切です。最初から「採算性が低そう」などと判断してしまうと、大きな可能性を秘めたアイデアを逃すかもしれません。自由闊達な発想を促しながら、企業の強みや技術資産を活用できるテーマを探っていきましょう。
3.市場性や事業性を見極める
アイデアがいくつか出そろったら、市場性や事業性を客観的に検証します。具体的には、ターゲット顧客がどの程度の規模やニーズを持っているか、既存の競合や類似サービスがどれほどあるかを調査します。また、技術的・法的制約や導入コストも勘案し、「本当に収益化できるか」を厳しく見極めます。
この段階では仮説検証を行うために、簡易なプロトタイプやPoC(概念実証)を作って実際に顧客の反応を確かめる方法も有効です。想定された問題点が顕在化することで、早期に修正すべき点や方針転換を判断できます。
4.事業計画の策定とチーム体制の構築
市場性を見込めたら、収益モデルや開発スケジュールなどを具体化した事業計画を策定します。どの程度のコストをかけ、どれくらいの売上を目指すのか、損益分岐点はいつかなどを明確にすると、経営層やステークホルダーからの納得を得やすいでしょう。
あわせて、プロジェクトを推進するチーム体制を整えます。代表となるプロジェクトリーダーを決めるだけでなく、マーケティング担当や開発エンジニア、バックオフィスのサポートなど、必要な役割を定義することが重要です。報告・連絡・相談のフローも明確にしておき、プロジェクト内外でのコミュニケーション不足を防ぎましょう。
5.ローンチ後の運用とPDCAサイクル
新規事業がローンチした後こそ、本格的な運用とPDCAサイクルの実践が重要です。初期の想定と実際のユーザー反応にはギャップが生じることが多いため、データやフィードバックを収集して改善点を洗い出します。
例えば売上が計画を下回る場合は、価格設定やプロモーションが不適切な可能性があります。UIや機能面の不満が多いなら、開発チームと連携して早期アップデートを検討する必要があります。こうした改善を素早く回すためには、経営層や現場の協力体制をあらかじめ整えておくことが大切です。
6.成果検証と次のアクション
一定期間が経過したら、事業計画と実績を照合し、KPIや収益目標に対してどの程度達成したかを検証します。達成度が高ければさらなる拡大や次のフェーズへの投資を検討し、不足している場合は原因分析を行います。原因が取り組み方の問題なのか、市場環境の変化なのかを見極めることで、次のアクションが変わります。
失敗した場合でも、学んだ教訓を組織内に残せるよう、ナレッジ共有の仕組みを設計しましょう。成功パターンや失敗の要因を洗い出し、今後の新規事業に活かすことで、企業としてイノベーションに強い体制を構築できます。
社内新規事業を成功させるための6つのポイント
新規事業を社内で推進するには、調査やリソース確保だけでなく、リスク管理やスピード感など多面的に注意する必要があります。ここでは6つの主要なポイントを挙げ、どのように事業成功を後押しするかを解説します。
1.立ち上げ前に事業性を慎重に調査する
社内のアイデアが盛り上がったからといって、すぐに着手するのはリスクが高いです。立ち上げ前の段階で市場調査や競合分析、顧客ニーズの検証などを丁寧に行い、事業性があるかを確かめる必要があります。
たとえば、ターゲット顧客がどのような課題を抱えているのか、既存の競合が多すぎないかなどを考慮して、実際に買ってもらえるだけの
価値を提供できるかを見極めます。数値データやユーザーヒアリングに基づくエビデンスを揃えておけば、上層部や関連部署の理解を得やすくなる利点があります。
2.新規事業に割くリソースを十分に確保する
新規事業の運営には、人材や予算、時間といったリソースが必要です。既存事業の合間に片手間で開発を進める状況では、思うようなスピードや品質が出ず、中途半端な成果に終わる可能性が高まります。
そのため、上層部やマネージャー層がしっかりとした予算と適切な人材配置を決定し、プロジェクトチームが集中できる環境を整えることが重要です。スキル不足が懸念されるなら、外部コンサルや専門家を部分的に活用する方法も検討しましょう。
3.リスク管理を徹底する
新規事業には失敗リスクがつきものですが、適切にリスク管理を行い、ダメージを最小限に抑えることも大切です。具体的には、開発コストの上限を設定したり、短いフェーズごとに成果指標を確認しつつ資金やリソースの投下を段階的に行う方式を採用することが考えられます。
また、市場リスクや法規制リスクなど外部要因に対しても、事前に情報収集を行い、想定しておくことが重要です。適切なリスク管理があるからこそ、担当チームは大胆なアイデアにもチャレンジしやすくなり、結果として高い確率で成果を出せます。
4.スピーディーに決断する
新規事業は、スピード感を持って実行と修正を繰り返すことで成功確率が高まる特徴があります。社内の承認プロセスが長引くと、競合に先行されたり、市場トレンドに乗り遅れたりするリスクが高まります。
そのため、経営陣やプロジェクトリーダーの決裁権限を明確化し、小さな失敗を恐れずに実験的な施策を進められる風土を作ると効果的です。具体的には、フェーズごとの目標を設定し、達成可否の判断を素早く行うことで、スピードとクオリティの両立が可能になります。
5.企業全体で取り組む
新規事業の成功は一部の部署だけの努力では難しいため、企業全体が協力する体制を築く必要があります。経営層が明確に支援を表明し、各部署が新事業に向けたタスクやリソース提供を行えるようにルールを整備することが肝心です。
たとえば、営業部署が新事業のヒアリングを担い、開発部署が技術支援、管理部門が契約や支払い関連をスムーズに進めるといった協力関係を築くと、プロジェクトの推進力が高まります。組織全体が新規事業を優先事項として捉えられるよう、定期的な情報共有の仕組みを作るのが望ましいです。
6.現場の協力を引き出す働きかけを実施する
新規事業の運営において、現場の知識や経験は欠かせません。実務を担うスタッフがアイデアを持っていても、上層部の意向や評価制度が阻害要因になり得ます。そこで、現場の意見を積極的に吸い上げる場を用意し、功績を正当に評価する仕組みを整えることが大切です。
具体的には、アイデア募集の制度化や、成果に応じた報奨制度などを検討すると良いです。そうすれば現場のモチベーションが高まり、自発的な創意工夫やチームワークが促進されます。このような土壌があれば、組織全体での新規事業成功確率が大幅に上昇します。
社内新規事業立ち上げで生じやすい課題と対処法
新規事業を立ち上げる過程で、計画通りに成果が出なかったり、組織内での体制が整わなかったりといった課題は起こりやすいです。ここでは3つの代表的な課題と、それに対処するための方法を紹介します。
立ち上げた事業の成果が想定を下回った
新規事業を開始してしばらく運用してみたが、売上や利用者数が計画値を下回るという状況は珍しくありません。原因には価格設定のミスマッチやターゲットの誤り、マーケティング不足など多様な可能性があります。迅速に原因を絞り込み、改善策を講じることが大切です。
たとえば、顧客アンケートや営業ヒアリングを行い、商品やサービスに対する反応を再度確認します。場合によってはプロダクトの大幅な改修やビジネスモデルの変更が必要になるかもしれません。成果が思わしくない状況でいち早く軌道修正を行えば、リソースの無駄遣いを防ぎ再挑戦しやすくなります。
社内に新規事業の知見がない
新規事業は既存事業とは異なる知識やスキルが求められる場面が多いです。たとえばITを活用したサービス開発や海外市場への展開など、社内にノウハウを持つ人材がいない場合、思うようにプロジェクトが進まないリスクがあります。
このようなときは、外部コンサルタントや専門家をパートナーに迎え、ノウハウや実務支援を受ける方法が効果的です。また、必要なスキルを持つ人材を新規採用することや、既存社員への研修・学習機会を積極的に提供して、組織の総合力を底上げするアプローチも考えられます。
社内の意思を統一できていない
経営層の意向と現場の理解、あるいは営業と開発などの部署間の目標設定が噛み合っていないと、新規事業は進行が止まりやすいです。責任の所在が曖昧だったり、評価軸が既存事業と同じだと、担当者が動きにくくなるケースもあります。
こうした問題を解決するには、コミュニケーションフローを整備し、経営層やプロジェクトリーダーが定期的に情報を共有することが重要です。全員が共通のゴールと価値観を持てるよう、会議体やオンラインツールを活用しつつ、現場が本音を発信しやすい文化を育むことが求められます。
新規事業立ち上げの成功事例
社内での新規事業立ち上げがうまくいった例は、大企業から中小企業まで多数存在します。たとえば、大手製造業が自社の技術を転用して全く別の業界へ参入し、新たな売上源を確保したケースなどが代表的です。既存の強みと社内での協力体制を活かし、市場の変化を捉えたことで成果を出したのです。
一方で、中小企業でも社員のアイデアを吸い上げ、新たなサービス開発に取り組んだ例もあります。小規模だからこそ決裁が早く、外部企業とのコラボやSNS活用など機動力を発揮して成功を収めています。いずれの場合も、ビジョン共有と継続的な仮説検証がカギだったという共通点があります。
まとめ
新規事業を社内で立ち上げるには、明確なビジョンから市場性の検証、ローンチ後の運用とPDCAサイクルに至るまで、一貫したプロセスが必要になります。組織内のリソースやノウハウをうまく活用しながら、事業計画を固めて進めることで成功への道が開けます。
しかし、社内調整やリスク管理などの課題も多く、目標を下回る場合は原因分析と再挑戦が欠かせません。うまくいかなかった教訓を糧にすることで、次のプロジェクトへと発展させる土壌が作られます。イノベーションを育てる社内文化を醸成するためにも、新規事業の成功事例や対策を取り込みながら、慎重かつ素早く行動を起こしてください。

koujitsu編集部
マーケティングを通して、わたしたちと関わったすべての方たちに「今日も好い日だった」と言われることを目指し日々仕事に取り組んでいます。