本記事では、YouTube広告を初めて出稿する方や改めて仕組みを理解したい方に向けてYouTube広告の基本をはじめ、課金方式や設定方法などを誰が読んでも分かるように具体例を交えながら網羅的に解説します。 […]
本記事では、YouTube広告を初めて出稿する方や改めて仕組みを理解したい方に向けてYouTube広告の基本をはじめ、課金方式や設定方法などを誰が読んでも分かるように具体例を交えながら網羅的に解説します。
YouTube広告とは
YouTube 広告は、Google広告の1つです。広告はYouTubeのフォームフィード(ホーム画面)や動画の再生前後、検索結果画面など、さまざまな場所に掲出できます。広告の長さは広告フォーマットによって異なりますが、なかには上限が6秒の広告もあります。ターゲティングや効果検証も可能です。
YouTube広告の特徴をメリット・デメリットで解説
YouTube広告には、3つのメリットと2つのデメリットがあります。
メリット
主なメリットは次の3つです。
・幅広いユーザーに広告を配信できる
・ターゲティングや広告フォーマットを活用して、効果的にアプローチできる
・広告の効果検証が可能
それぞれのメリットについて解説します。
幅広いユーザーへリーチできる
YouTubeは世界中で利用されている動画プラットフォームです。2022年1月時点の世界の月間アクティブユーザー数は、25億6,200万人に達しています。
また、総務省の令和3年度の調査結果によると、10代から40代の利用率は90%を超えています。50代以上の利用率は、50代で82.5%、60代で67.0%、70代で33.8%です。性別を問わず利用率が高いため、YouTube広告を通して、10代から50代の男女に幅広くアプローチすることが可能です。
■出典:
令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書 令和4年8月 総務省
ターゲティング・フォーマットの種類が豊富
オーディエンスターゲティング(人の指定)とコンテンツターゲティング(場所の指定)ができます。また、広告フォーマットも5種類あります。これにより効果的なアプローチが可能です。ターゲティングの概要は下表のとおりです(広告フォーマットについては後述)。
【オーディエンスターゲティング】
・ユーザー属性:ユーザーの年齢や性別、子どもの有無などをもとに配信
・興味関心:商品やサービスに興味関心があるユーザーに絞って配信
・データセグメント:広告主との接触履歴をもとに配信
・カスタマーマッチ:広告主が保有する顧客データをもとに配信
・類似セグメント:データセグメントやカスタマーマッチに似た特徴をもつユーザーに配信
例えば、レディースファッションの広告の場合、ユーザー属性を女性に絞って配信することができます。
【コンテンツターゲティング】
・プレースメント:YouTubeチャンネルやYouTube動画など、掲載場所の指定
・トピック:指定したトピックに関連する動画に掲載する
・キーワード:指定したキーワードをもとに掲載場所を決める
・デバイス:パソコンやスマートフォンなど、掲載するデバイスを絞る
例えば、子ども向けの動画広告の場合、プレースメントを子どもに人気のYouTubeチャンネル(HikakinTVなど)に絞って配信できます。
効果検証ができる
YouTube広告の各指標をもとに、広告の効果検証が可能です。指標を活用するために、KGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)を設定しておきましょう。効果測定に用いられることが多い指標は次の4つです。
視聴回数 | 広告が視聴された回数 |
視聴率 | 広告が視聴された割合 |
クリック数 | 広告がクリックされた回数 |
コンバージョン数 | 広告をクリックした視聴者が商品購入や問い合わせなどの行動を起こした数 |
デメリット
主なデメリットは次の2つです。
広告をスキップされることが多い
スキップ可能なインストリーム広告の場合、再生開始から5秒経過すると広告のスキップが可能です。株式会社ネオマーケティングの調査結果によると、動画広告を「必ずスキップする」「スキップすることが多い」と回答したユーザーは9割以上に達しました。スキップできない広告の場合でも、広告が表示されたことで動画の視聴をやめるユーザーがいるため、結果的に広告が視聴されない可能性があります。動画広告において、最初の5秒が重要といわれるのはこのためです。
■出典:20歳~69歳の男女1000人に聞いた「動画広告の接し方に関する調査」
広告のクオリティによっては逆効果になる
同調査によると、動画広告の内容によって企業や商品などに対する印象が悪くなったことが「ある」「たまにある」と回答したユーザーは45.6%でした。動画広告の嫌いな点として、3割を超えたのが次の5つです。
・1位:本編の動画を邪魔される(81.9%)
・2位:興味がない商品やサービスの広告が流れる(59.5%)
・3位:何度も同じ広告が流れる(41.4%)
・4位:広告自体面白くない(37.5%)
・5位:急に広告に画面が切り替わって驚かされる(36.3%)
一方で、動画広告の内容によって印象が良くなったことが「ある」「たまにある」ユーザーも26.6%います。ユーザーの視聴を遮るという性質上、動画広告の効果は広告のクオリティに左右されやすいのです。
YouTube広告の配信フォーマットは6種類
現在利用できる広告フォーマットは、以下の5種類です。
・インストリーム広告
・インフィード動画広告
・バンパー広告
・アウトストリーム広告
・マストヘッド広告
各フォーマットについて説明します。
インストリーム広告
動画本編の前後または途中に再生される広告です。動画の再生前に流れる広告をプレロール、再生中に流れる広告をミッドロール、再生後に流れる広告をポストロールといいます。再生完了率はミッドロールが最も高く、ポストロールが最も低い傾向にあります。
スキップ不可
「スキップ不可のインストリーム」といい、広告は最後までスキップできません。動画の長さの上限は15秒です。認知度の向上などに適しています。
スキップ可
「スキップ可能なインストリーム」といい、広告は5秒間再生するとスキップできます。長さの上限はありません(推奨は3分未満)。販売促進などに適しています。
インフィード動画広告(旧TrueViewディスカバリー広告)
動画コンテンツを探す場所(YouTubeの検索結果や関連動画など)に表示される広告です。長さの上限はありません。広告はクリックしないと再生されないため、商品やサービスに興味関心のあるユーザーに絞って訴求できます。
バンパー広告
動画の前後または途中に再生される、スキップできない短い広告です。長さの上限は6秒です。認知度向上などに適しています。
アウトストリーム広告
YouTube以外の場所(Google動画パートナー上のWebサイトやアプリ)に表示される広告です。広告は音声なしで再生され、ユーザーがタップするとミュートが解除されます。長さの上限はありません。認知度向上などに適しています。
オーバーレイ広告
パソコンで視聴したときにのみ、動画の下部に重なって表示される広告です。2023年4月に廃止されました。
マストヘッド広告
YouTubeのホームフィードの上部に、音声なしで自動再生される広告です。長さの上限は、パソコンのみ30秒です。モバイルやテレビ画面の場合、上限はありません。イベントの実施など、短期間で認知度を高めたいときに適しています。
YouTube広告を配信する際の課金方式・費用相場
広告の課金方式と費用相場は、下表のとおりです。
YouTube広告の課金形式
課金方式 | 内容 | 広告フォーマット |
インプレッション課金(CPM) | 広告が表示されると費用が発生 | インストリーム広告
バンパー広告 アウトストリーム広告 マストヘッド広告 オーバーレイ広告 |
視認範囲のインプレッション課金(vCPM) | 広告が2秒以上再生で費用が発生 | アウトストリーム広告 |
動画視聴課金(CPV) | 広告が視聴されると費用が発生 | スキップ可能なインストリーム広告 |
クリック課金(CPC) | 広告がクリックされると費用が発生 | インフィード広告 |
【料金表】YouTube広告の費用相場
広告の種類 | 費用相場 |
インストリーム広告(スキップ可・不可) | 3~20円 |
インフィード動画広告 | クリック |
バンパー広告 | 10~500円 |
アウトストリーム広告 | 10~500円 |
マストヘッド広告 | 1日で数百万円にまでなることも |
YouTube広告の出稿方法 ※入稿時にキャプチャ挿入
出稿の流れは以下のとおりです。
1.Google広告に登録する
2.YouTubeチャンネルに広告をアップロードする
3.Google 広告で動画キャンペーンを作成する
4.予算やターゲットなどを設定する
5.配信する動画の出稿手続きをする
6.審査に通過する
それでは、具体的な出稿方法を確認しましょう。
事前準備
はじめにGoogle広告に登録します。登録には、メールアドレスと広告で宣伝したいWebサイトのURLが必要です。YouTube広告に掲載する動画も用意しておきましょう。
1.YouTubeチャンネルに動画をアップロード
Googleアカウントにログインした状態でYouTubeを開きます。画面右上の「作成」アイコンから、「動画をアップロード」を選びます。動画ファイルを選択し、必要事項を入力したら「公開」または「非公開」で保存しましょう。これで広告のアップロードは完了です。
2. Google 広告から動画キャンペーンを作る
Google広告で新しいキャンペーンを作成します。広告の目標を問う画面で、「エキスパートモードに切り替える」をクリックすると、「目標を指定せずにキャンペーンを作成する」ことも可能です。キャンペーンタイプは「動画」を、キャンペーンのサブタイプは利用する広告フォーマットを選びます。
3. 予算・ターゲットを設定
キャンペーン名や入札戦略(詳細は先述の課金方式を参照)、予算、ターゲットなどを指定します。
4. 配信する動画を入稿
YouTubeチャンネルにアップロードした動画のURLを検索バーに貼り付けて、広告のフォーマットを選択します。「行動を促すフレーズ」とは、広告再生中や再生後に表示されるバナーのことです。最後に「キャンペーンの作成」をクリックします。
5. 支払いに関する情報を登録する
「ツールと設定」から「設定」をクリックして、クレジットカード情報などを登録します。支払タイプのうち、支払いの処理が完了した時点で広告が掲載されるのが自動支払いです。手動支払いの場合、入金が完了するまで広告は掲載されません。これで広告の出稿準備は完了です。
6. 審査に通ると配信開始
Google広告のステータスが「有効」になると配信できます。通常、審査は1営業日以内に完了します。
YouTube広告の審査
Google広告のポリシーや動画広告の要件に違反していないかどうかの審査です。審査の概要は次のとおりです。
・審査対象:動画や見出し、説明文など全てのコンテンツ
・審査期間:通常1営業日以内
・審査開始:出稿手続きが完了次第、自動で審査される
・ステータス:「認証済み」になると配信できる
広告が「不承認」になった場合、修正または異議申し立てを行います。Google広告のポリシーや動画広告の要件については、下記のサイトを参照してください。
■参考:
Google Ads policies – Advertising Policies Help
YouTube広告の成功のコツ
YouTube広告を成功させるために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
目標をしっかりと決める
広告出稿によって達成したい目標(KGI)をもとに、KPIを設定しましょう。認知や購入などの行動につなげるために、どのような指標を用いるのか検討します。例えば、認知度向上が目的の場合、確認が必要なのは次のような指標です。
・表示回数:広告が表示された回数
・ユニークリーチ:広告が表示されたユーザーの総数
・平均表示頻度(フリークエンシー):広告が表示されたユーザー1人あたりの平均回数
・インプレッション単価(CPM):広告を1,000回表示するのにかかる費用
・インプレッション:平均総再生時間
KGIやKPIを設定しておくと、広告の改善や出稿中止の判断を行いやすくなります。
初めの5秒でユーザーを引き付ける
最初の5秒でユーザーの心をつかむ動画に仕上げましょう。先述のとおり、動画広告をスキップすると回答したユーザーは9割以上に達しています。さらにスキップできない広告でも、広告が表示されたことで視聴をやめるユーザーもいます。ヤフー株式会社の自主調査によると、インターネットの利用中に広告が表示されたことで視聴をやめた経験がある人は過半数に上っており、スキップできない広告においても最初の5秒は重要です。
ユーザーに続きを見たいと思わせる広告にするためには、信頼できる根拠がある広告にすることや、その広告に興味があるユーザーに配信することが有効です。スキップされた場合に備えて、訴求ポイントを最初に表示するのも良いでしょう。
■出典:7割のユーザーが感じている! 広告ストレスをなくすためのヤフーの取り組み
Googleリスティング広告などの獲得施策も併用
Googleリスティング広告とは、ユーザーの検索語句に連動して検索結果画面に表示されるテキスト広告のことです。コンバージョン率が高い一方で、認知度が低い商品やサービスには不向きです。これに対して、YouTube広告は認知度向上に適しています。
認知度向上におすすめの広告フォーマットは、ユーザーの動画視聴を遮る時間が短い(上限6秒)バンパー広告です。時間が短いため、広告作成にかかる費用も抑えられます。併用したことで表示回数が増えているかどうか確認し、十分な効果が出ていない場合にはターゲットを絞るなどの改善を行いましょう。
YouTube広告に関する注意点
広告の制作や出稿に関する注意点は、次の3つです。
・ほかのSNSで配信している広告を使い回さない
各SNSによって、ユーザーに受け入れられやすい広告は異なります。例えばYouTubeでは面白い広告が人気ですが、Instagramでは一般ユーザーの投稿になじむ広告が人気です。さらに同じ広告が何度も流れることでユーザーが「しつこい」と感じ、印象が悪化する可能性も高まります。
・ターゲットを絞る
ユーザーの興味関心に基づいて配信するほうが、ターゲットを絞らずに配信するよりも効果的です。さらに興味関心に基づいて配信することで、ユーザーにとって価値のある広告が表示されやすくなります。
・ユーザーにとって価値のある広告を配信する
ユーザーの興味関心のほかに、面白い広告やストーリー性のある広告によって印象が良くなるケースもあります。
YouTube広告を活用した注目事例
YouTube広告の活用事例を3つ紹介します。
株式会社ジャストシステム
タブレットを活用した、小中学生向けの通信教育サービス「スマイルゼミ」を提供している会社です。出稿の目的は、新規ユーザーの獲得でした。TrueViewアクション(※)を活用することで新規ユーザーの獲得に成功し、広告視聴者のサービスへの関心度も44%向上しました。
※コンバージョン獲得に特化した広告です。動画、商品やサービスを宣伝するテキスト、行動を促すフレーズの3つを掲載して、視聴したユーザーの行動を促します。現在は「動画アクションキャンペーン」にアップグレードされています。
■公式サイト:ジャストシステム
Tuft&Needle
2012年に設立された、米国のマットレス会社です。出稿の目的は、限られた予算で競合他社との差別化ポイントをアピールすることでした。ターゲティングを慎重に行い、購入してもらいたいユーザーにアプローチした結果、6,000ドルで立ち上げた会社の売上は5年間で1億ドルを超えました。
■公式サイト:Tuft & Needle
株式会社ダンボール・ワン
1978年に設立された、段ボールや梱包資材の製造販売を行う石川県の会社です。出稿の目的は、限られた予算で会社の知名度を向上して人材を確保することでした。石川県の20代に向けたRPG風の広告を配信した結果、15日間で約47万人のユーザーに約168万回広告が表示されました。さらに広告経由で28人の応募がありました。
■当該動画:https://youtu.be/0gyXz851OjE
■公式サイト:ダンボールワン
まとめ
動画広告はスキップされやすく、悪い印象を与えやすい広告です。しかし、表示された広告がユーザーにとって価値がある場合は最後まで視聴されやすく、さらにユーザーに良い印象を与えることが判明しています。
YouTube広告の場合、面白い広告やストーリー性のある広告、ユーザーの興味関心に合致した広告は最後まで視聴されやすい傾向にあります。最初の5秒間でユーザーの心をつかむ広告にすることもポイントです。ユーザーにとって価値がある広告を配信するためには、広告内容だけでなくターゲティングや広告フォーマットの選択も重要です。目標を明確にして、予算や目的に合ったものを選びましょう。