KPIを設定して日々の仕事に取り組んでいるのに、期待通りの結果が得られない…。もしこんな悩みを抱えているとしたら、その原因はKPIの設定自体にあるのかもしれません。日々の業務を効果的に進め、ビジネスの目標を確実に達成する […]
KPIを設定して日々の仕事に取り組んでいるのに、期待通りの結果が得られない…。もしこんな悩みを抱えているとしたら、その原因はKPIの設定自体にあるのかもしれません。日々の業務を効果的に進め、ビジネスの目標を確実に達成するためには、どのような方法があるのでしょう。
この記事では、KPIの設定が成功するためのポイントやコツについて掘り下げます。KPIが適切に設定されて、初めて組織のパフォーマンスが向上し、目標達成が近づくのです。
KPIとは?
これは、日々の業務が計画通りに進んでいるかどうかを判断するための基準であり、組織としての成果を数値的に把握し、適切に管理することが可能となります。KPIは英語の「Key Performance Indicator 」の頭文字をとった略称で、日本語では「重要業績評価指標」や「重要達成度指標」として知られています。
具体的に説明すると、KPIは企業が掲げた戦略目標に対しての進行状況を確認する指標 です。例えば、組織が売上の達成を目指している場合、KPIとして営業チームの訪問件数や商談成立率を設定します。訪問件数や商談の成功率を向上させることにより、売上の目標達成に寄与することが可能です。
また、顧客満足度を高めることを目的とする場合、カスタマーサービス部門では、サービスレベル(SL)や平均応答時間(ASA)といった指標をKPIとして設定することが考えられます。これにより、顧客対応の質を数値で評価し、改善が必要な部分を見極めて、顧客の満足度向上に努めることが可能となります。
なぜKPI設定が重要なのか?
では、なぜKPIの設定がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それは、KPIが目標を実現するための具体的な行動やステップを明確にし、計画立案の土台を提供するからです。単に最終目標だけを掲げるのではなく、その目標を達成するために必要となる具体的で小さな目標をクリアしていくことが肝要となります。
例えば、新年の目標として「年間250日ランニングをする」と決めたとします。ただ目標を掲げるだけではなく、どのように日々取り組むかが成否の鍵を握ります。ここでKPIが役立つのです。
「毎週4日以上走る」「毎朝出勤前にランニングを日課とする」といった具体的なKPIを設定することで、必要な行動がより明確になり、目標達成に向けた具体的なステップを踏むための計画を立てやすくなるのです。KPIはその実現過程でガイドとして働き、目標に向かう道筋を照らし、成果を積み重ねる助けとなります。
売上目標達成のためのKPI設定
ビジネスの目標設定は、企業の方向性を明確にし、組織全体を一体化するための重要なプロセスです。例えば、「前年比130%の売上目標達成」や「50億円の売上目標設定」といった具体的な数字が掲げられることはよくあります。
しかし、これらの数値目標は一見すると挑戦的であり、具体的にどのように達成するかを考える段階になると、途方に暮れることが多いでしょう。特に、優秀な営業担当者であっても、「今年度は前年比130%を目標に」といった抽象度の高い目標だけを示されると、その具体的な行動計画を練るのに苦労することが予想されます。
このようなときに役立つのがKPIの設定です。KPIとは、組織の目標達成に向けた過程を細かく分析し、具体的な行動計画として指標化することが目的 です。「前年比130%の売上目標」を達成するために必要な条件を分解して可視化することで、組織全体がどの方向に向かうべきかが明確になります。
KPIは単なる目標設定のツールにとどまらず、企業が掲げる長期的なビジョンを現実的な行動計画に落とし込むことで、目標達成への道筋がより具体的になり、組織が一丸となって成果を上げる可能性が高まるのです。
売上KPI設定のステップ
売上KPI設定のステップについて説明します。
売上目標(KGI)の設定
目標設定の方法において、KPIとは、組織の目標達成に向けた過程を細かく分析し、具体的な行動計画として指標化することが目的KGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)はよく取り上げられる指標です。これはビジネスにおける最終的な目的を明確にするもの で、例えば「前年から売り上げを30%増加させる」や「売り上げ目標を50億円に設定する」といった具体的な数値によって表現されます。
KPIは、KGIを達成するためのプロセスにおいて、日々の業務が計画通りに進行しているかを確認するための指標です。KPIとKGIの関係性を整理することで、ビジネス戦略の全体像を把握しやすくなると言えるでしょう。
KPIツリーの作成
KPIを設定する際には、KPIツリーを活用すると非常に効果的です。このKPIツリーは、ロジックツリーというフレームワークを活用しており、最終目的であるKGIを細分化し、KPIとして視覚化する手法です。
売上目標を達成するために必要な要素を詳細に分類し、適切なKPIを導き出します。これにより、KGIに辿り着くまでのプロセスが明確になり、KPI間の関連性やそれを構成する個々の要素を整理整頓することができるのです。
KPIを導入して運用を開始した後のプロセスについては、1ヶ月ごとのペースで実績を分析し、目標や戦略を継続的に修正していくことが肝要です。
KPIの具体化
業績向上のためには、まずKPIを明確に定めることが大切です。そして、それを実現するための実施計画をしっかりと策定する必要があります。
例えば、「オンラインショップへのアクセス数を一定割合で拡大させる」といった目標を掲げた場合、具体的な取り組みはソーシャルメディアの活用や検索エンジン最適化(SEO)の強化などです。これらの活動により、KPIの達成に向けて必要な作業を明確化し、優先度に応じて着実に実施することが求められます。
これらの目標を業務レベルに落とし込み、適切にアクションを起こしていくことが重要です。また、設定したKPIはチーム全体で共有することが重要です。それによって各メンバーが自分の役割や仕事内容を理解し、協力体制が築かれるほか、メンバーのやる気向上にもつながります。
KPIのモニタリング
KPIに掲げた目標を効果的に達成するためには、単に計画を実行するだけでなく、進捗状況を定期的にチェックし、必要な調整やアップデートを行うことが重要です。特に、プロジェクトの成否を左右するKPIに対しては、タイムリーなモニタリングと見直しが欠かせません。
また、より効果的なKPIの管理を望む場合、管理者やマネージャーは専門のツールを活用することを検討すべきです。これにより、数値の集計作業が効率化され、迅速な意思決定が可能となります。
具体的な売上KPIの例
具体的な売上KPIの例を2つ説明します。
活動量視点でのKPI
活動量視点でのKPIを4つ解説します。
①「新規顧客訪問件数」
効果的な営業を実現するには、新しい顧客との接点を作ることが重要です。ただし、単に訪問を増やせばよいというわけではありません。重要なのは、訪問が真に営業機会を生む可能性があるかどうかです。
例えば、投資用マンションを販売する場合、対象となるのは経済的な余裕がある富裕層です。この層へアプローチすれば成約に繋がる可能性が高まります。一方で、収入のない学生を訪問することは、時間と労力の無駄になることでしょう。このため、訪問の数と質のバランスを見極め、ターゲットを絞った効果的な営業活動が求められます。
②「既存顧客への接触回数」
既存顧客への定期的なフォローアップもまた、営業の成功に必要な要素です。各営業担当者が現在抱える案件数は、彼らの仕事の効率や質に直接影響を与えます。案件数が少なすぎれば、時間を持て余してしまい生産性が低下しますが、逆に多すぎると一つ一つの案件への対応が煩雑になり、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。
そこで、案件管理には使いやすいSFA(営業支援ツール)の活用がおすすめです。営業活動の可視化と効率化が可能となり、適切なタイミングで顧客と接触することができるのです。
③「見積もり提出件数」
営業担当者にとって、見積もりの提出数は彼らの日々の活動がどれだけ成約に繋がり得るかを示す重要な指標です。特に、RFP(提案依頼書)が出された場合、それに応じた適切な見積りを迅速に提出することが求められます。
この指標は、特に実力のある営業担当者や、限られた件数で高い受注率を誇る担当者に対して設定するのが効果的です。彼らが更にその能力を発揮するための指針となり、営業の質の向上に寄与します。
④「商談実施件数」
商談数は、営業のプロセスにおいて重要なKPIの一つです。特に、潜在顧客の数と商談に至ったケースの割合を追跡することで、営業活動の効率を測ることが可能です。ただの名刺交換で終わる見込み顧客(リード)を、どのように有効な商談に発展させるかが鍵となります。
商談が増えれば増えるほど成約のチャンスも増し、ひいては売上の向上に繋がります。そのため、商談のクオリティとそれをどう数に変えるかのスキルは、営業担当者にとって極めて重要な能力です。
品質視点のKPI
質的視点からのKPIを4つ解説します。
①「受注率」
営業活動において、見込み客の受注率、すなわちコンバージョン率は非常に重要です。仮に、100件の訪問を行った営業パーソンがいたとします。この営業パーソンが1%の成約率であれば、成約件数はわずか1件に留まります。しかし、成約率が50%であれば、わずか10件の訪問で5件もの成約を生むことができ、効率的な営業活動が実現可能です。
この受注率は、以下のような数式で簡単に求めることができます。
見込み客の受注率(コンバージョン率)=成約件数÷営業件数
この公式を使用することで、営業の効果を具体的に確認でき、改善ポイントを見据えることが可能になります。
②「平均受注単価」
平均受注単価をKPIとして管理することも有効な手段です。受注単価が上昇すれば、顧客数が少なくても総売上が増加します。具体的な例として、1万円の粗利をもたらす商品を10人に販売するよりも、50万円の粗利をもたらす商品を1人の顧客に販売した方が、売上は40万円も増加します。
このように、平均受注単価に注力することにより売上を効果的に向上させることができるのです。
③「顧客満足度」
ビジネスの現場では、営業担当者に対する評価を直接顧客から得ることは現実的には難しい場合が多いです。
例えば、面談の際にその場でアンケートをお願いすると、回答にバイアスが掛かりやすくなりますし、商談の結果が評価に影響する可能性もあります。そのため、個々の面談の満足度に基づいて営業活動を評価することは困難です。
もしどうしても顧客からのフィードバックを得たい場合は、プロジェクト完了後に総括的な評価を依頼するのが良いでしょう。これにより、顧客の本音を反映した評価を得やすくなります。
④「案件の成約までのリードタイム」
案件の成約までのリードタイムをKPIとして位置付けることも考えられます。契約までの期間を短縮することで、同じ時間内により多くの営業活動を実施でき、結果的に売上の増加を見込めるでしょう。
例えば、契約までに通常2ヶ月かかっていたものを1ヶ月で完了できるようにすることで、単純計算で営業活動が2倍に増え、売上の向上に直結します。効率性向上のための様々な営業戦術を駆使してリードタイムを短縮し、ビジネスの成長を加速させることが可能です。
KPI設定の注意点
企業が目標を達成するためには、効果的なKPIの設定が肝要です。ここでは、KPIを設定する際に注意すべき3つの重要なポイントについて詳しく説明します。
目標達成に貢献しないKPIは設定しない
まず、KPIは直接的にKGI(重要目標指標)と結びついている必要があります。KGIは最終的な目的地を示すものであり、KPIはその目的地に到達するための具体的な道しるべと言えるからです。このため、KGIから逆算して考えることで、最も効率的な方法で進むことが可能になります。
もしKGIと関連のないKPIを選んでしまうと、無駄な作業が増加し、貴重なリソースが不必要に費やされることになります。さらに、チームメンバーのやる気が低下する可能性もあります。そのため、KPIはあくまで過程、KGIは最終ゴールであることを理解した上で、戦略的に設定することが必要です。
数値化できないKPIは設定しない
数値化できないKPIは設定しないようにしましょう。KPIは具体的な数値で評価できるものであるべきです。これにより、誰もが同じ基準で進捗を確認できるため、従業員間での認識のズレを最小限に抑えることができます。数値化できる指標は、「数」や「量」で測れるものであり、目標がより明確になるというメリットがあります。
例として、「SNSのフォロワー数を増やしたい」という曖昧な目標では、人によってその認識に差が生じるかもしれません。「SNSのフォロワー数を具体的に300人増やす」というように、明確な数値目標を持つことで、誰もが同じゴールに向けて仕事を進めやすくなります。
高すぎず低すぎない、達成可能な目標値を設定する
KPIは、高すぎず低すぎない、達成可能な目標値を設定しましょう。目標を過大に設定してしまうと、現実性が欠け、モチベーションの低下につながってしまう可能性があります。逆に、簡単すぎる目標設定は成長の機会を失います。
そのため、最適なKPIは、「少し努力すれば達成できる」と思えるバランスの取れた目標です。これにより、達成感を持ちながらステップアップしていくことが可能となり、結果的に組織全体の成長を促進することができるでしょう。
まとめ
KPIを設定する際は、目標の設定で満足せず、その後のモニタリングに注力することが重要です。営業成績を向上させる鍵は、KPIを設定した後の継続的な測定と分析にあります。たとえば、成約率の低い営業スタッフには、クロージングスキルを持った同僚と共に活動してもらうのが一つの方法です。
また、訪問数が足りない場合は、訪問対象のリストを明確化するよう指導し、それに基づくアクションを促します。これにより、KPI達成のみならず、売上の増加も期待できます。初めから完璧なKPIを設定することは難しいため、設定後は常に観察し、必要に応じて調整を行うことで改善可能です。PDCAサイクルを回すことで、プロセス自体が進化し続けます。
目標を毎期達成し続ける企業は、このような施策を通じて持続的な営業改革を実現しているのです。