新規事業の立ち上げは、企業がさらなる成長を遂げるための重要な戦略です。市場の変化や競争の激化が進む中、企業は現状維持だけでなく、新たな挑戦を求められています。しかし、新規事業には成功と失敗の両面があります。 成功するため […]
新規事業の立ち上げは、企業がさらなる成長を遂げるための重要な戦略です。市場の変化や競争の激化が進む中、企業は現状維持だけでなく、新たな挑戦を求められています。しかし、新規事業には成功と失敗の両面があります。
成功するためには過去の事例から学び、失敗を避けるためのポイントを理解し、適切な準備を行うことが必要です。本記事では、日本国内で特に注目を集める10の成功事例を紹介し、さらに失敗しやすいポイントや成功への秘訣、アイデア創出の方法を解説します。新規事業を成功に導くための知見をぜひ活用してください。
新規事業の成功事例の10選
新規事業の成功には、多くの要素が絡み合っています。市場の需要を的確に捉え、革新的なアイデアを実行に移すことで、企業は新たな成長の機会を掴むことができます。ここでは、国内外で特に注目を集める新規事業の成功事例を10選取り上げ、それぞれの事例から学べるポイントを紹介します。
それぞれの取り組みを深く理解することで、自社の事業に役立つヒントを見つけることができるでしょう。
1.富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、写真関連製品を展開する企業で、かつてはフィルム市場を牽引していました。しかし、デジタル化の進展に伴い市場が縮小する中、新規事業として化粧品開発に着手しました。
この取り組みの背景には、フィルム製造で培った粒子を微細化する技術が活用できたことがあります。この技術を応用することで、化粧品の浸透力を向上させる製品開発に成功し、現在では化粧品分野でも確固たる地位を築いています。
2.ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業は、通所介護事業者向けに送迎支援システム「らくぴた送迎」を提供しています。このシステムは、デイサービス施設での送迎業務を効率化するために開発されました。専用アプリを活用することで、最適な送迎ルートを自動で作成し、ドライバーと施設間の連絡もスムーズに行えます。
また、利用者が到着した際には自動で通知が送られるため、家族にも安心感を提供します。「らくぴた送迎」は、介護業界のデジタル化を推進する成功例として評価され、数々の賞を受賞しています。
3.日本郵政株式会社×Yper株式会社
日本郵政は、Yper株式会社と共同で開発した置き配バッグ「OKIPPA」を活用し、配送業界の人手不足問題に対応しています。従来の宅配ボックスは高価で設置が難しい点が課題でしたが、OKIPPAは折り畳み式でコンパクトかつ低価格で、設置場所を選ばず利用可能です。
また、配送大手8社に対応した専用アプリを使えば、配送状況の確認が容易で利便性が高い点も特徴です。この仕組みは、不在時の荷物受け取りをスムーズにし、配達員の負担軽減に繋がるとともに、配送業界の効率化を推進する解決策として注目されています。
4.ソニーグループ株式会社
ソニー株式会社は、新規事業支援プログラム「SSAP」を展開し、企業のアイデア創出から事業化までを支援しています。このプログラムは、技術力を持ちながらも事業化に課題を抱える企業に向けて設計され、新たな収益源の確保をサポートします。これまでにSSAPを活用して17の事業化を実現しており、その成果が注目されています。
また、不動産分野では、2014年に設立したソニー不動産株式会社が、顧客ニーズに応じたエージェント制度を採用し、きめ細かなサポートを提供しています。新規事業創出を積極的に推進する同社の取り組みは、幅広い分野での活躍が期待されています。
5.三井物産株式会社
三井物産株式会社は、AIスピーカーを活用したサービスの多くが若者向けである点に着目し、シニア世代向けの音声サービスアプリを開発しました。このアプリは、孤独感を抱える高齢者が地域コミュニティと繋がる機会を提供し、心身の健康維持を目指したものです。
高齢化が進む日本に特化した取り組みであり、シニア層のニーズに応えることで事業の成功を収めました。また、自治体との連携を通じて地域社会の活性化にも貢献し、社会問題解決型の新たなビジネスモデルとして注目されています。
6.株式会社キュア・アップ
株式会社キュア・アップは、禁煙を目指す人々を支援するオンラインプログラム「ascure卒煙プログラム」を提供しています。このアプリは、禁煙外来の指導経験を持つ専門家が利用者の状況を把握し、個別のサポートを行う仕組みです。
特に日中の通院が難しいサラリーマンや、病院に通うのを煩わしく感じる人でも利用しやすい点が特徴です。また、個人ではなく法人向けに提供されており、企業の福利厚生向上に寄与する点も評価されています。今後、健康意識の高まりとともに、さらなる普及が期待されています。
7.テクシアマシナリー株式会社
テクシアマシナリー株式会社は、昭和22年創業の金属加工会社で、印刷機用ローラーや精密機器の製造を手掛けています。同社は新型コロナウイルスの影響で手芸市場が拡大していることに着目し、布製品をカットする機械の品質向上に取り組みました。
紙用ローラーとは異なる仕様の開発には時間を要しましたが、布用ローラーの開発に成功。その高い技術力が評価され、多くのメーカーから新規受注を獲得し、事業の新たな柱として成長を遂げています。
8.パナソニック株式会社
パナソニックは、住宅やオフィスで培った環境制御技術を応用し、農作物の生産効率向上と生産者の負担軽減を目指した「アグリ・エンジニアリング事業」に取り組んでいます。同社が開発した「パッシブハウス型農業システム」は、自然の光や風、水を活用し、農作物の最適な生育環境を自動で整える技術です。
このシステムは、センサーから得たデータを基に太陽光や気流、水の量を統合制御し、葉物野菜の成長を促進します。2014年には埼玉県の農園で試験導入され、管理の手間を大幅に削減し、効率的な農業を実現しました。生産者からも高い評価を得て成功を収めています。
9.本田技研工業株式会社
本田技研工業株式会社は、自動車やオートバイの技術を応用し、小型ジェット機の開発に成功しました。このジェット機は、2021年まで5年連続で同クラスの納入数で世界トップを記録するなど、高い人気を誇ります。
高速飛行や高高度、長距離飛行を可能にする独自技術が特徴で、超軽量ながら低価格を実現した点も支持を集める要因です。また、新型コロナウイルスの影響で人との接触を避けたいという顧客のニーズにも応え、時代の流れを見据えた事業展開が成功の鍵となっています。
10.KIYOラーニング株式会社
KIYOラーニング株式会社は、社会人向け教育コンテンツ事業を展開しており、2017年からスマホやタブレットで利用可能な社員教育クラウドサービス「AirCourse」を提供しています。このサービスは、新人教育やコンプライアンス研修などの標準コースに加え、各企業が独自の教育コンテンツを簡単に作成・管理できるのが特徴です。
また、同社が手掛ける資格取得支援サービス「通勤講座」で培ったノウハウを活用しており、既存事業を基盤にした新規事業として成功を収めています。企業の教育を効率化する画期的なサービスとして注目されています。
新規事業を立ち上げる上でよくある失敗する5つのポイント
新規事業の立ち上げには多くのリスクが伴います。特に、計画段階での失敗は、事業全体の成功を左右する重大な問題となります。ここでは、新規事業において陥りがちな失敗のポイントを5つ挙げ、その解決方法を考察します。これらのポイントを理解し、事前に対策を講じることで、事業の成功確率を高めることができます。
1.市場のニーズを理解していない
新規事業の失敗で最も多い要因の一つが、市場のニーズを正確に把握していないことです。顧客の課題やニーズを理解せずに製品やサービスを提供すると、ターゲット層からの支持を得られず、需要のない商品となってしまいます。事前に市場調査を徹底的に行い、顧客の求める価値を具体的に把握することが大切です。
2.人材が不足している
新規事業を成功させるには、多様なスキルと経験を持つ人材が必要です。しかし、リソースが十分に確保できない場合、事業の成長が停滞する可能性があります。特に、専門的な知識が不足していると、競争優位性の確立が難しくなります。これを防ぐためには、社内外から適切な人材を確保し、組織としての力を強化する必要があります。
3.仮説と検証を行っていない
新規事業では、計画段階での仮説検証が極めて大切です。仮説を立てずに事業を進めると、リスクの高い意思決定を行いやすくなります。例えば、顧客が求めていない機能を追加したり、過剰なコストをかけたプロジェクトを進めたりする場合があります。仮説検証を繰り返し行うことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
4.ターゲットが設定されていない
具体的なターゲット層を設定しない場合、製品やサービスの価値が曖昧になり、市場での差別化が困難になります。新規事業では、ターゲットを明確にし、そのニーズに応える戦略をの策定が不可欠です。ペルソナ設計やマーケットセグメンテーションを活用し、的確なターゲティングを行いましょう。
5.撤退する基準を曖昧にしている
新規事業には成功だけでなく、失敗のリスクもつきものです。しかし、撤退基準が曖昧だと、リソースを無駄に消費し、最終的には企業全体に悪影響を及ぼすことがあります。適切なタイミングで撤退を決断するためには、KPIや収益目標を設定し、それを基に判断する基準を事前に明確にしておくことが重要です。
新規事業を成功させるポイント
新規事業を成功させるためには、明確な戦略と計画が必要です。ここでは、成功を目指す上での重要なポイントを解説します。これらを実践することで、リスクを軽減し、事業を軌道に乗せる可能性が高まります。
新規事業がブレないように目的を明確にする
新規事業を立ち上げる際には、その目的や目標を明確に定めることが大切です。「なぜこの事業を行うのか」「どのような成果を目指すのか」といった点を具体的に設定することで、方向性がぶれることなく、一貫した戦略を立てることができます。
また、事業の目的が明確であれば、関係者間での意思疎通もスムーズになり、協力体制が強化されます。たとえば、目標として「市場シェア10%の獲得」「既存事業の補完的役割」などを明示することで、プロジェクトチーム全体が共有できるビジョンを持つことができます。
従業員との意見交換をしっかり行う
新規事業の成功には、チーム全体の協力が不可欠です。そのため、従業員との意見交換を積極的に行い、現場の視点やアイデアを事業計画に取り入れることが求められます。特に、現場で顧客と直接接する従業員から得られるフィードバックは、顧客のニーズや市場動向を把握する上で非常に有益です。
また、従業員を巻き込むことで、事業に対する理解とモチベーションが向上します。オープンなコミュニケーションを心がけることで、企業全体での一致団結が図れるでしょう。
新規事業のアイデアを練る3つの考え方
新規事業のアイデアを生み出す際には、クリエイティブな発想と市場の需要をバランス良く考えることが大切です。ここでは、効果的なアイデア創出のための3つの方法を紹介します。
1.身の回りの身近な悩みに着目する
新規事業のアイデアは、日常生活の中にヒントが隠れていることが多いです。たとえば、普段の生活で「これはもっと便利にできないか」と感じるような場面に注目することで、新たな製品やサービスの可能性を見つけることができます。
事例として、家事の手間を減らすための時短家電や、通勤時のストレスを軽減するモビリティサービスが挙げられます。これらはすべて、身近な課題に目を向けた結果として生まれたものです。
2.世の中の需要に目を向けて考える
現在の市場で注目されているトレンドや課題を分析することも、アイデアを生み出す有効な手段です。特に、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)など、社会的に重要視されているテーマに関連したアイデアは、長期的な成長が見込まれる可能性があります。
たとえば、脱炭素社会を目指すための再生可能エネルギー事業や、高齢化社会に対応したヘルスケアサービスなどがこれに該当します。
3.自社の強みを振り返る
自社が持つ技術やリソースを活用することで、他社との差別化が図れる新規事業を考えることができます。たとえば、既存事業で培ったノウハウやネットワークを活用し、新しい市場への進出が可能です。
ソニーがエレクトロニクスの技術を応用してエンターテインメント事業で成功を収めた例や、富士フイルムが写真技術を化粧品や医療分野に展開した例は、このアプローチの成功例と言えるでしょう。
まとめ
新規事業の立ち上げは、企業にとって大きな挑戦ですが、その成功は企業の成長や競争力向上に直結します。本記事で紹介した成功事例や失敗しやすいポイント、成功のための秘訣を参考に、効果的な事業計画を立ててください。また、アイデアを練る際には、市場の需要や自社の強みに基づいた発想を大切にしましょう。
最後に、新規事業の成功は一夜にして成し遂げられるものではありません。長期的な視点を持ちつつ、柔軟な戦略を採用することで、新たな市場での成功をつかむことができるでしょう。