
日々の問題解決や新たなアイデアの創出には、柔軟な思考が求められます。その中でも「ラテラルシンキング」は、固定観念にとらわれず、多角的な視点から物事を考える力を養う大切な思考法です。この手法は、従来の論理的思考を補完し、新 […]
日々の問題解決や新たなアイデアの創出には、柔軟な思考が求められます。その中でも「ラテラルシンキング」は、固定観念にとらわれず、多角的な視点から物事を考える力を養う大切な思考法です。この手法は、従来の論理的思考を補完し、新しい解決策や価値を発見することを可能にします。
本記事では、ラテラルシンキングの定義やメリット、鍛え方、さらには簡単な例題を通して、その実践的な活用法を詳しく解説します。ビジネスや日常生活に役立つこの思考法を学び、新たな可能性を切り開く力を身につけてみませんか?
ラテラルシンキングとは?
ラテラルシンキング(水平思考)は、既成概念にとらわれず、新たな視点や柔軟な発想を持つための思考法です。1967年にエドワード・デボノ博士によって提唱され、現代でも創造的な問題解決法として注目されています。論理的な枠組みに従うのではなく、既存の枠組みを乗り越える方法が特徴です。
ラテラルシンキングの定義
ラテラルシンキングは、「従来の枠組みや前提条件を疑い、新たな視点で物事を考える思考法」と定義されます。この考え方は、単純に自由に考えるだけではなく、既存の視点や習慣から一歩外に出て、従来の思考パターンでは到達しえなかった新しいアイデアを見つけ出すことを目指します。
具体的には、問題解決で「なぜこの方法だけなのか?」と自問し、他の選択肢や可能性を探ることに重きを置きます。たとえば、ある商品の販売促進を考える際、通常のアプローチでは「どの広告手法が最適か」といった分析に集中します。
一方、ラテラルシンキングを用いると「広告以外にどのような方法で顧客を引き付けられるか」といった、新しい可能性を模索する発想に至ります。
ラテラルシンキングを活用する3つのメリット
ラテラルシンキングは、従来の思考パターンを超えた革新的なアイデアを生む力を持っています。その効果は、個人やチームの枠を越え、企業や社会全体にも影響を与えます。以下では、ラテラルシンキングの具体的な3つのメリットを詳しく解説します。
アイデアや自由な発想を生み出せる
ラテラルシンキングの特性の一つに、固定概念に縛られない自由な発想を引き出す力があります。この思考法を取り入れることで、従来の枠組みや制約から解放され、従来の方法では到達できなかった革新的なアイデアが生まれます。
たとえば、家電業界で新たな発想を生み出した例として、掃除機を「掃除する機械」ではなく「家全体を清潔に保つためのサービス」と捉えた企業があります。この結果、製品販売だけでなく清掃サービスの提供や関連ソリューションをパッケージ化した新たな事業モデルを確立しました。
さらに、自由な発想は、チーム内でのブレインストーミングにも効果的です。全員が既成概念を捨て、どんな意見でも自由に出し合うことで、多様なアイデアが生まれやすくなります。この過程で生まれたアイデアが、競合にない独自性を生むことにもつながります。
新たな価値や解決法を見出せる
ラテラルシンキングは、単にアイデアを生むだけではなく、既存の課題に対して新しい価値を見出すためにも効果的です。この思考法により、従来の解決策に囚われることなく、まったく新しい形での問題解決が可能となります。
例えば、飲料業界で一般的だったペットボトル飲料の販売で、ある企業が「環境に優しい」という視点を追加しました。結果として、再利用可能なボトルを使った飲料ディスペンサーの提供を開始し、従来の「売って終わり」のビジネスモデルから、リサイクルを前提としたエコロジー志向のサービスモデルへ転換を果たしました。
こうした新しい価値の発見は、特に競争の激しい業界で、他社との差別化を図る効果的な手段です。さらに、このアプローチは、企業だけでなく個人がキャリアを切り開く場面でも効果的です。自分自身のスキルや経験に対し、新たな見方を持つことで、新たな役割やポジションを発見する機会が増えるでしょう。
問題に対する答えが増える
ラテラルシンキングを実践すると、一つの問題に対して複数の解決策が見つかるため、選択肢が広がります。これは、単一の解決策が必ずしも最善とは限らない状況で特に役立ちます。さまざまな視点を取り入れることで、柔軟かつ効果的な解決策が見出せます。
たとえば、教育現場での課題として「授業中の生徒の集中力を高める方法」を考える場合、従来のアプローチでは、授業の進め方や教材を工夫する方法が主流でした。しかし、ラテラルシンキングを用いると、「授業そのものの形式を変える」という発想が生まれることがあります。
具体的には、オンラインと対面のハイブリッド形式を取り入れる、グループワーク中心のスタイルに切り替えるなど、従来の考え方では想像しにくいアプローチが可能になります。
また、この思考法は個々の問題だけでなく、チームや組織の中での複雑な課題にも適用できます。一つの案に固執することなく、多様な視点を検討することで、想定外の解決策や新しい方法論が見つかる可能性が広がります。
その他思考法との違い
ラテラルシンキングは、他の思考法と異なる特徴を持っています。特に、ロジカルシンキング(論理的思考)やクリティカルシンキング(批判的思考)と比較することで、そのユニークな役割が明確になります。以下では、それぞれの思考法との違いを詳しく見ていきましょう。
ロジカルシンキングとの違い
ロジカルシンキングは、物事を論理的に整理し、筋道を立てて結論を導き出す思考法です。仮説を立て、それを検証しながら最適解を導き出すプロセスが基本です。論理的であることから、ビジネスの課題解決やプレゼンテーションの準備など、多くの場面で利用されています。
一方で、ラテラルシンキングは、論理的な枠組みそのものを疑い、新しい発想を探ることを目的とします。
例えば、ロジカルシンキングでは「どうすればこの課題を効率的に解決できるか」を考えますが、ラテラルシンキングでは「そもそも、この課題にこだわる必要があるのか?」や「課題そのものを異なる視点で捉えられないか?」といった根本的な疑問を投げかけます。
具体例を挙げると、商品を販売する際、ロジカルシンキングでは「どのターゲット層に向けたマーケティングが効果的か」と考えるでしょう。
しかし、ラテラルシンキングでは「商品そのものを変えることで、別の市場に展開できないか」といった別次元の解決策を模索することが可能です。この違いにより、ラテラルシンキングは、特に革新が求められる場面で真価を発揮します。
クリティカルシンキングとの違い
クリティカルシンキングは、与えられた情報や主張に対して客観的かつ批判的に考え、不備や偏りを見つけて正確な結論を導き出す思考法です。この手法は、情報があふれる現代社会で欠かせない役割を果たします。正確なデータや信頼できる根拠を重視するため、信頼性のある結論を出す際に役立ちます。
これに対し、ラテラルシンキングは、正確性や根拠の分析よりも、視点の転換や創造性を重視します。クリティカルシンキングが現状の問題点を明確にするのに対して、ラテラルシンキングはまったく新しい解決策や価値を見出すことを目的とします。
例えば、新製品の開発で、クリティカルシンキングは「市場で類似製品が成功している理由」を分析し、それに基づいて戦略を構築します。一方、ラテラルシンキングは、「従来の市場に縛られず、全く新しいカテゴリを作り出すにはどうすればよいか」といった全く異なるアプローチをとります。
両者を比較すると、クリティカルシンキングは「現在を深く掘り下げる」手法であり、ラテラルシンキングは「未来を広げる」手法です。この二つを状況に応じて使い分けることで、より幅広い課題解決が可能になります。
ラテラルシンキングの鍛え方
ラテラルシンキングは、生まれつきの才能だけでなく、訓練や工夫によって誰でも身につけることができます。ここでは、ラテラルシンキングを鍛えるための具体的な方法を3つご紹介します。日常生活や仕事の中で実践することで、柔軟な発想力を育むことが可能です。
前提を疑う
ラテラルシンキングの基礎は、まず「前提を疑うこと」にあります。私たちは日常的に多くの固定観念に縛られており、これらをそのまま受け入れることで、新しい発想の余地を狭めてしまうことがあります。このような前提を意識的に見直すことで、全く異なる視点から物事を捉えられるようになります。
たとえば、従来の会議では「みんなが同じ部屋で話し合うこと」が当たり前とされています。しかし、この前提を疑った結果、リモート会議や非同期型のコミュニケーションツールが生まれ、働き方が大きく変化しました。このように、何気ない習慣や既成概念を「本当にそれが最善なのか?」と自問することが、ラテラルシンキングを鍛える第一歩です。
さらに、実践方法として「逆説的な質問」を取り入れるのも効果的です。たとえば、「売上を上げるためにはどうすれば良いか?」という問いに対し、「売上を減らすにはどうすればよいか?」と逆に考えてみることで、通常では見えない課題や新しい解決策が浮かび上がることがあります。
モノの見方を変える
ラテラルシンキングを鍛える2つ目の方法は、「モノの見方を変える」練習をすることです。これは、物事を異なる視点や文脈で捉えることで、柔軟な思考を育むアプローチです。新しいアイデアを生むためには、同じ状況や情報を異なる切り口から見ることが必要です。
具体的には、視点を変える練習として「6つの帽子思考法」などが効果的です。この方法では、感情、直感、事実、可能性など、異なる視点で問題を分析します。たとえば、新しい製品の企画で、ポジティブな視点では「これがどのように人々を助けるか」を考え、批判的な視点では「この製品が抱えるリスク」を検討する、といった具合です。
また、日常生活でも視点を変える練習を取り入れることが可能です。たとえば、いつも使っている道具を「別の用途で活用するにはどうするか?」と考えることで、新しい使い方や改良点が見えてきます。こうした視点の切り替えは、特にクリエイティブな仕事や問題解決の場で大きな効果を発揮します。
感情を洗い出しヒラメキを見つける
感情を洗い出し、それをヒラメキに繋げることも、ラテラルシンキングを鍛える大切な方法です。感情は、私たちの思考や判断に大きな影響を与えますが、それを整理し表現することで、新しいアイデアの種を見つけることができます。
たとえば、チームでの議論が行き詰まったとき、参加者全員に「この問題に関してどう感じているか」を共有してもらうと、予想外の視点やアイデアが出てくることがあります。また、感情に基づいた発想は、より人間的で共感を呼びやすい解決策を導くことに繋がります。
さらに、「自由連想法」や「マインドマップ」などの手法を活用すると、感情を整理しやすくなります。自由連想法では、思いつく言葉や感情を次々に紙に書き出し、それをもとに新しい関連性を見つけます。これにより、自分自身が気づいていなかった潜在的なヒラメキが浮かび上がることもあります。
ラテラルシンキングの簡単な例題
ラテラルシンキングを鍛えるためには、実際の例題に取り組むことが効果的です。ここでは、日常的な場面でも応用できるシンプルな例題を紹介します。この思考法を実践することで、固定観念にとらわれない柔軟な発想を養うことができます。
オレンジの分け方
「1つのオレンジを3人の子どもで平等に分けるにはどうすればよいでしょうか?」という問いは、一見単純で明快な問題に思えます。しかし、ラテラルシンキングを用いることで、一般的な解決策を超えたさまざまな答えが見えてきます。この問題は、柔軟な発想と視点の転換の大切さを象徴するものです。
まず、ロジカルシンキングを用いる場合、オレンジを3等分するのが最も一般的な解決法となります。この方法は、数量的な平等を前提とし、誰もが納得しやすい明快な解答です。しかし、ラテラルシンキングでは、この枠組みを超えて、より創造的な解決策を模索します。
たとえば、オレンジの果肉、皮、ジュースのように、それぞれの部分を異なる形で活用する分け方が考えられます。一人は果肉を食べ、もう一人は皮を使ってマーマレードを作り、残りの一人はジュースを楽しむ方法です。このアプローチは、単に物を均等に分けるのではなく、それぞれが最大限の価値を得ることを目指しています。
また、「共有する」という発想を取り入れることもできます。オレンジをそのまま使ってジュースを作り、3人で一緒に楽しむ方法です。この視点は、分配そのものではなく、共に楽しむ体験を重視しており、新しい価値を生み出すものです。
さらに、「平等」という概念そのものを見直すこともラテラルシンキングの一例です。「平等」を数量ではなく、役割や好みに基づいて再定義することで、より合理的で満足度の高い分け方が可能となります。たとえば、1人はオレンジそのものを好み、残りの2人は料理やデザートに使いたいとした場合、それぞれのニーズに応じた分け方が適切となります。
このように、オレンジの分け方のようにシンプルな問題を通しても、固定観念にとらわれない思考の大切さを実感することができます。ラテラルシンキングは、日常生活やビジネスの場面でより柔軟で効果的な解決策を導くための強力なツールとなるでしょう。
ラテラルシンキングを鍛えるための3つの本をご紹介
ここでは、ラテラルシンキングを鍛えるためのおすすめの本を紹介します。
①3分でわかるラテラルシンキングの基本
注目ポイント
- ・ラテラルシンキングの基本を短時間で理解できる
- ・短時間で読めるうえ、即実践できる知識とスキルが得られる
- ・ビジネスだけでなく、あらゆる場面で新しい価値を生み出せる思考法が身につく
料金
1,540円(税込)
本の概要
本書は、ラテラルシンキングの基本的な要素を「前提を疑う」「新しい見方をする」「組み合わせる」という3つに絞り、分かりやすく解説しています。物事に対する視点や思考を変える発想法が詳しくまとめられています。新しいプロジェクトを始める際や、既存の問題の新しい考え方を見つけたい場合に、本書で提案される手法を取り入れることで、多くの気付きが得られるはずです。
本の基本情報
出版社 | 日本実業出版社 |
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発売日 | 2008/11/25 |
著者 | 山下 貴史 |
※2025年1月時点
②ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門
出典:ずるい考え方 – 株式会社あさ出版 ビジネス書、ビジネスコミック、健康、語学書等を発行
注目ポイント
- ・ラテラルシンキングを一味違った角度から学べる
- ・実用的なテクニックが豊富に紹介されている
- ・従来の方法や常識にとらわれず、多角的に発想法が提案されている
料金
1,430円(税込)
本の概要
常識にとらわれず自由な発想を可能にする考え方・最短ルートで問題を解決する考え方・お金や時間をかけずに目的を簡単に達成する考え方を、ポジティブな意味で「ずるい」と表現し、読者をひきつけています。アイデアを形にしたいクリエイターや、新しいプロジェクトを始めたい起業家、日常生活で様々な工夫を楽しみたい人など、幅広い読者におすすめの1冊です。
本の基本情報
出版社 | あさ出版 |
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発売日 | 2011/05/24 |
著者 | 木村 尚義 |
※2025年1月時点
③天才たちの思考法 図解でわかる! はじめてのラテラルシンキング
出典:天才たちの思考法 図解でわかる! はじめてのラテラルシンキング | 総合法令出版
注目ポイント
- ・スピーディーに変化する時代についていく考え方を提案
- ・ビジネスで活用するための「頭の筋トレ」ができる
- ・図解と実例を豊富に用いてラテラルシンキングを解説
料金
1,540円(税込)
本の概要
ラテラルシンキングに必要な3つの力(前提を疑う・抽象化・セレンディピティ)を身につけるワークと、ビジネスシーンなどを想定した複数のクイズで思考力が鍛えられます。ラテラルシンキングの基本から応用までが詳しく解説され、初めて学ぶ人におすすめの1冊です。図解とクイズ形式で提案される内容は、理論だけでなく、実践的なスキルも身につけやすいものとなっています。
本の基本情報
出版社 | 総合法令出版 |
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発売日 | 2019/12 |
著者 | 木村 尚義 |
※2025年1月時点
まとめ
ラテラルシンキングは、既成概念を疑い、新たな視点で問題を解決する思考法です。これにより、革新的なアイデアや多様な解決策が生まれ、ビジネスや日常生活で活用されています。他の思考法と比較して、柔軟な発想や枠組みを越えた視点を持つ点が特徴的です。
「前提を疑う」「モノの見方を変える」などの方法を通じて鍛えることができ、日常の小さな課題にも応用可能です。例題「オレンジの分け方」からも分かるように、この思考法は固定観念を超える力を養います。変化が激しい現代で、ラテラルシンキングは成長や競争力向上のポイントとなるスキルであり、積極的に取り入れる価値があります。
